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 鎌倉殿の13人。泥の味をチョコレートに淡い痰の味をクリームに。西村賢太先生。ありがとう。

泥の味をチョコレートに淡い痰の味をクリームに

俺らは走った。頼朝と走った。昨日までは田舎の家人、土地の管理をしていたのに。今では立派なもののふ。いや、悪党だものな。世の中、わかんねえよな。遠くに町が見える。町は夜に輝いて、光っている。昨日までが懐かしい。部屋の香り、ジュースの香り。声真似の趣。すべてが懐かしい。馬がうるさい。光がまぶしい。テレビがうるさい。閃光の光が目の奥を走る。頼朝様が前を行く。俺には向田先生みたいなのもない。よしもとばなな先生みたいな透明感もない。ただ馬が走る。馬が目の前を走るだけ。田舎の浪人が豪族の長を担いで走るだけ。コーラが飲みたい。ジュースが飲みたい。フライドチキンが食べたい。雪が冷たい。でも、馬は走る。兄さんが喜んでいる頼朝を連れてきたぞと喜んでいる。父さんが小便をちびる。俺は向田先生の本を読む。あれもよんでこれもよんで。俺は今日も読む。明日も読む。師明後日も読む。けれども、戦いは始まってしまった。平氏と戦う事は決まってしまった。俺の家は気が付いたら普通の家じゃなくて大郎党の長の家だ。ああ、昨日まで懐かしい。けれど、決まったこと。決められてしまった事。自分で進んだことなんだ。たとえこれが農民の浅知恵だとしても今は進むしかない。あの太陽を目印にして。この馬に乗って。ただまっすぐに。汚い言葉がまぶされていても心は心根だけはまっすぐに。泥の味をチョコに変えて痰の味をクリームに。そんな毎日を過ごしていきたい。兄さんの事を忘れてしまっても僕は忘れない。兄さんがこの馬に乗っていたことを。兄さんがこの向こうをこえてこれからも走っていこうとしたことを。俺は忘れない。泥の味をチョコレートに淡い痰の味をクリームにそんな人を俺は知らない。だから、俺は忘れない。兄さんの事をずっと。この胸に。兄さんが好きな人のお墓に一生懸命通ったように俺も忘れない。本当に。だから、この涙もブルーハワイに変えてしまおう。このもやもやも綿菓子に変えてしまおう。兄さんが小説の中で行ったようにこの馬の風の中に。