この間、幼稚園でニコがサンタクロースは本当にいるって言ってた。
本当にいるわけないのにさ。賢治君もユミちゃんもその気になっちゃってさ。
サンタはいるなんて間違った情報だよ。そんなのに流されるなんて立派なスパイにはなれないよ。僕のパパみたいさ。
ネェ。勇君。勇君のパパがスパイだってダレがいったの。
パパから聞いたんだ。僕のパパはスパイだったんだ。
でも、オシゴト違うじゃない?
本当だよ。僕のパパはスパイだったんだ。本当だよ。
ソレトいっしょダッテイテンノヨ。勇君のパパがスパイだってこともサンタさんが本当 いるってことも、同じレベルの話ってコト。これは基本よ。スパイのネ。
嘘だよ。僕、パパに聞いてくる。
パパ。パパはスパイだったんだよね。
どうだったんだろうな。さあな。
それから、サンタさんはいないよね。ニコがさ。ケンちゃんと弓をバカにしてんだ。ケン
ちゃんはピュアだから。信じるし、弓も話をすぐ話を合わせちゃうんだよ。
ニコは結構やるやつだよ。ニコがスパイだったら結構ランクが高いと思うね。
こら、勇。ニコちゃんをそんな風にいうな。賢治君もユミちゃんも勇の仲のいい友達だろう?友達は大事にするもんだ。
ごめんなさい。僕が間違ってたよ
そうだぞ。勇。それにすぐに感情的になっていては一流のスパイにはなれない。
でも、お前が自分の得ている情報が正しいか疑問に思うのは良いことだ。
サンタがいるか。いないのか。お前はどう思う?
サンタはいないよ。パパ。だって、人間がトナカイの力を借りてそりで空を飛ぶなんておかしいと思う空を飛ぶんだよ。しかも、おじいさんが。そんなのっておかしいよ。おもち ゃは、おもちゃ屋さんで買う。その方が現実的だよ。パパ。
勇。そうか。その方が現実的か。でもな。不思議なことは案外、身近にあるもんだ。
ないよ。僕はファンタジーは嫌いだ。
そうか。それはパパもだが。
そうでしょ。パパも嫌いだよね。だって、患者さんが助かるのは、パパの頑張りだし、
患者さんも助かりたいと思ってるからでしょ?パパ。言ってるでしょ。
そうだが、それも、それだけじゃないかもしれないんだ。勇。目に見えることがすべてじゃない。
それは、勇が一番知っているはずだ。
えっ。パパ。それって。もしかして。スパイの事?
それは本当だよね。
パパは本当だと言ったことはないぞ。それは勝手に勇がパパはスパイだと盛り上がって
いるだけだ
見たのか。勇。聞いたのか。
でも、僕、そう思いたいもん。
ファンタジーとはそういうものなのかも知れないんだ。勇。パパはスパイだと思うか?
思うよ。
サンタはいると思うか?
パパ。サンタはいないよ。
なら、それが本当だ。
なんだ。それ。アンねえちゃんみたいなこというな。僕、パパがスパイだって信じてるからね。
お前がそう思うならそれが本当だ。
パパ。さっきからそればっかり。僕。信じてるからね。パパがスパイだったって。それからサンタはいないから。ニコとケンちゃんとユミがどれだけいっても。信じないからね。
ああっ。勇。どこに行くんだ。
俺にも現実は一つしかないと思っていた。時期があった。
だが、あの馬鹿たち。三人のおかげで少しだけ信じることができた。
サンタはいない。サンタを信じない子供か。
そうだな。あつらなら、そんな子供のために、サンタクロースを信じない子供の為に芝居をしただろうな。俺はそんなお前たちの背中を見て、スパイになるのをやめた。いや、それを見たから、この腕をこの力を使うと決めたんだ。自分の目に見える世界のために。
そうか。サンタを信じない子供と信じる子供。ニコちゃんにも、あいつらみたいな人たちが付いているかもしれない。ファンタジックな世界のスパイたちが。