アイスクリーム 阿修羅が如くより 向田邦子先生 アイスクリームというと冷たいイメージでも私は違った。私にとってアイスクリームとはだれかとだれかの中を取り持ってくれるもの。それは鍋じゃないという人もいるけど私の場合は違った。私の家は三人姉妹でいつもいがみ合っていた。だけど、アイスを食べているときは静かになった。みんな三人とも一心不乱にお経をとなえるように拝むようにアイスが溶けないように食べたのだ。あんなことはもうない。皆家庭がある。家がある。一番上は物理学の教授。二番目はサラリーマン。私は図書館の司書。本の虫が。小さな本の虫がここまで大きくなったのだ。図書館司書というのはさえてなければいけないのに秋の日にアイスクリームの思い出を思い出すとはおかしな話だと思った。おかしな話でもときより思い出したくなる。たとえ、季節外れだとしても心の中の思い出をふと、思い出すことが時々あるのだ。