僕は、アスミちゃんを見ていた。
今、アスミちゃんは、あの子にココアを作っている。
アスミちゃんは、ココアを作りながらふふっと笑っていた。
僕はこのアスミちゃんの笑顔が好きなのだ。
僕が笑っているアスミちゃんを見ていると、ねえ、町田くんも、ココア飲むと聞いてきた。
僕はそういうアスミちゃんに、僕もココアを飲むよ。ありがとう、アスミちゃんと答えた。
僕がそういうと、アスミちゃんは喜んで、
町田くんも飲むの?じゃあ、私も飲むよ。三人で飲もうね。といった。
僕は、その時、新鮮だった。
いつもは、二人なのだ。二人以上の時もあるが、又吉さんも町山さんもジェームズ先生も、僕らが、二人の時は、なぜか、気を使って、一緒に何かをするということは、なかなかしないのだ、だから僕はアスミちゃんが三人で飲もうねといった時、とても、新鮮だった。
そして僕は、三人でも聞いた時、とても、照れくさいような恥ずかしいような気持ちになった。
三人って、家族みたいだなと思ったからだ。
僕がお父さんで、アスミちゃんがお母さん、そして、あの子が子供もだ。
お母さんといえば、アスミちゃんはいいお母さんになれるだろう。なぜならば、笑顔が素敵で、優しい。そして、時に厳しい。
そんな、お母さんとして、大切なのではないかなと思うものを、アスミちゃんは、僕は持っていると思う。
僕は、アスミちゃんが、いつも隣で笑っていてくれたら、力が出て、いつも仕事を頑張れるだろうなと思った。
僕は、あの子のお父さんになれるであろうか、まだ、それはわからない。でも、この旅で、何があっても、お父さんではなくても、アスミちゃんとあの子を守る。守るために最大限に頑張るという事を、心に誓った。
僕は、お父さんになれるかは、わからない。
けれど、子供が生まれたら、休みの日には、映画館や図書館に子供と出かけたり、ドライブで山に出かけたりして、自然を肌で感じさせてあげたりしたいと思った。
そんなことができたら、楽しいだろうなと思った…。
僕がそんな、遠い遠い、もしかしたら、近い、未来を空想していると、アスミちゃんが、キッチンから、お盆に、ココアの入った、マグカップをこちらに持ってきて、僕の座っている。
テーブルに置いた。そのアスミちゃんの顔は笑っていた。僕はその顔を見て、なんて、可愛い笑顔なんだろうと思った。船室の優しい照明がアスミちゃんの優しい笑顔を優しく照らす。
テーブルにココアを持ってくるとさっきまで部屋のソファでくつろいでいた、あの子が「あ、ココアじゃないか、ハサマのために作ってくれたの、ありがとう。」といって、椅子に座った。
そんなあの子を見て、アスミちゃんは「、そうだよ、お姉さんがつくったの、みんなで飲むために。ハサマちゃん、ココアは、あったかくて美味しいよ。
ココアはね、飲むと心の中があったかくなるんだ。」といって笑った。
僕は、この時のアスミちゃんの笑顔のには、いつもと違った、あの子を愛おしむような気持ちがあるように感じた。
僕がアスミちゃんの笑顔を見ながら、また、物思いにふけっていると、アスミちゃんが僕とあの子の前に、ココアを置いた。そして、最後に自分の座る席に、ココアを置いて、自分も座った。
僕ら三人の前に置かれた、マグカップからは湯気が、出ている。その中にはアスミちゃんが入れてくれた。あったかいココアが入っている。
そのココアからは、甘い香りが漂い、僕たちを癒してくれていた。
そんな僕たちを、船室の照明が優しく照らしていた。僕たちは、今、優しい空間に包まれているのだ。
僕はそう思いながら、「ありがとう、アスミちゃん、冷めないうちに飲もう、きっと美味しいよ。そとは寒いからね。いただきます。アスミちゃん。」といった。
僕がそういうと、アスミちゃんは、「いただきます。」といって、ココアを飲んだ。
あの子も、「それじゃあ、いただくよ。いただきます。ありがとう。」といって飲んだ。
アスミちゃんの作ったココアは、甘くて美味しかった。
僕たち三人の心にココアが優しく広がった。
僕は、そのココアを飲みながら、なんて幸せなんだろうと思った。そして、この幸せがずっと続けばいいのにな。と思った。
僕がそう思う間も船室の照明は僕たちを優しく包み、僕の心には、アスミちゃんが作ってくれた、ココアが優しく広がっていた。