好きこそものの上手なれ。
僕は、雑誌に載せる記事を書きながら、ココアを飲んでいた。このココアはドレスタニアという国のものらしい。
僕は、最初、聞きなれないものは買わないと思っていたが、ドレスタニアという音の響きに面白さを覚えた僕は、このココアを買う事にした。
外国産であるため、少々値が張ったが、僕はこのココアを買った。
僕が今、書いているのは、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のバードマン 無知がもたらす予期せぬ奇跡の記事だ。
この映画は、バードマンは、以前、ヒーロー映画人気を博した俳優、リーガンが、演劇の街、ブロードウエイで自分の以前からの夢であった、愛について語る時に我々の語ることという小説の舞台に挑戦し、俳優として再起をかけるという映画だ。
彼はなぜ、無謀な挑戦をしたのか。その先に何が待っているのか。過去の成功は変えることはない。過去は美しい。けれども先に進まなければならない。
この映画で、マイケル・キートンが50歳のかつて、バードマンというヒーローの役を演じて人気を博した、リーガン・トムソンを演じている。
マイケル・キートンは、映画、バッドマンで、バットマンを演じている。
リーガンは、エマ・ストーンが演じる娘ともうまくいっていない。娘からは過去の人だと言われてしまう。それでも、信じて進むトムソン。
彼の道の先にあるものは、何がまっているのだろうか。?
僕は、ここまで書き進めて、ココアを飲んだ。
僕は、ドレスタニアのココアを飲みながら、昔の事を想い出した。昔、僕は、ゴジラ宣言という本を作ったり、映画秘宝という映画雑誌を作ったことを思い出してしていた。
たくさん、本を書いてきたなあ。好きこそ物の上手なれというけれど、よく映画と怪獣でここまで突っ走ってこれたなあ。
と思った。僕は、このココアを飲んでいると不思議な気持ちになった。
あの時は、若いエネルギーで頑張ってきた。子供の頃は怪獣が好きで、一日一回はオリジナル怪獣を作ったりしていて、
「町山くん、怪獣怪獣博士だ。凄い。」って言われていたものだ。僕はその時が、とてもうれしかたたまらなかった。だから、他のクラスにもいた怪獣博士にまけないために、怪獣の事をたくさん勉強したものだ。
そして、「ねえ、金星ガ二、知ってる。?」とか、「ネズラ、知ってる?」とか、他のクラスメイトや友達に、皆が知らないような珍しい怪獣の事を、言ったものだ。それがめぐりめぐって今の仕事につながっていると言えば、つながっているのかもしれない。怪獣は、もう本当に好きで、ずっと、飽きずに毎日怪獣をおいかけていた。
そんなこんなで、映画もむさぼるように見て、気が付けばここにいた。縁あって妻と出会い、めぐりめぐって、アメリカに渡った。不思議なものです。僕はまたココアを飲んだ。
ココアは、甘く、映画評を書いていて、疲れた僕の頭に元気を与えてくれた。
つかれたときは、甘い物が良いという。
そんなココアを飲んでいると、また続きを書かないといけないと思って僕は、マグカップを置いて、仕事に戻った。
僕はバードマンの記事を書きながら、幾つになっても、好きなものは好きなのだ。僕は幾つになっても、映画と、怪獣が好きで、これからも好きなのだと思った。
マイケル・キートンもこのバードマンの中で頑張っている。パンツ一丁で、多くの人で溢れかえるタイムズスクエアを歩き回っている。
50歳を超えて、なお、マイケル・キートンが体当たりで、トムソンを演じる姿はとても印象的だ。
好きこそものの上手なれ。
だから、僕もこの仕事を続けていきたい。幾つになっても。と思った。
僕はそう思いながら筆を進めて、またココアを飲んだ。
ココアの甘さが、記事を書くことで疲れた僕の頭にまた元気を与えてくれた。
好きこそものの上手なれ。
そして、また僕は、バードマン 無知がもたらす予期せぬ奇跡の記事を書く仕事に戻った。
好きこそものの上手なれ。
無知がもたらす予期せぬ奇跡。