父の日。家族のカケラ。
これは、↓↓のお話に関連したお話です。
六月のある日。せんろは書類をかいていた。
次の大事な会議の書類だ。今度はワコクの物流に関する会議だ。
津山議員、カメリア国海洋研究所の魚住博士など懐かしい顔がそろうことになった。
せんろは忙しい。明日は西、明日は北。と国中を回る。
しかし、カゾクサービスもよく行っている。秘書ののぞみさんと一緒に国中を回るのだ。
リノやソファーもつれて行くこともある。しかし、彼女たちも100%、子どもではないので仕事中に変わったりはしない。
のぞみさんも最近、そこを計算に入れ始めたらしいがのぞみさんが気を抜くとせんろが自分で緩めるのでそこはのぞみさんの腕の見せ所である。
勝手が分かっているというと津山議員もこのことは知っている。リノももちろん。仕事中は心のステージにはリノもそふぁちゃんも入らないヨ。ということは知っているそうである。
しかし、その様子を後ろのせんろがいる指導室で見ているので、たいていの事は知っている。
せんろがのぞみの思いに少し気づいている事も政治にテツロウがどんな思いで取り組んでいるのかも指導室から見ている。ソファちゃんに部屋に戻るように言われても背中を見ているのが好きなのでソファも誘ってみているのだ。
逆もあって、リノとソファの様子を指導室から見ている。時には体部分を動かし、結局は自分で演じている部分もあるのだが、私は私。リノはリノ。ソファはソファ。皆、私である前にあなたである。という事は変わらないので、自分も楽しんでいる。
だから、せんろはスポーツジムにいっている。のぞみとは別のジムだ。守屋議員より小さく馬力もない。けれど、一番、国やカゾクの事を思う気持ちがある。何よりもその気持ちが大事だ。と思う。はたから見れば児戯に等しいのだがせんろはカゾクだと思っているし。国の事も愛していた。最近、不思議な事を思うようになった。前までは何とも思わなかったがのぞみさん。結構、綺麗ですね。と思うようになった。不思議である。10歳近く離れているのに。不思議である。
この心境の変化をせんろは面白いと思っていた。心境というのは変わっていくものだ。と一番、理解していた。心と国は似ている。国も心も変わっていく。心が集まり、国となるのか。国が集まり、心となるのかは知らないが、せんろはそう思った。
そんなことを思いながらせんろは書類を作っていった。最近、デスクワークが増えてきたように思う。こんなのをリノに見せても面白がるとは思わない。ソファは好きそうだが、古風な男が言った。男は背中で語るものだと。今はめっきり聞かなくなったが。とまあ、今は、そんなきどった話は無しで、現実問題、のぞみさんと対峙しよう。この書類と対峙しよう。これが私の選んだ道なんだ。せんろは思った。
のぞみさんはストップウォッチを持って計っている。今日は気合が入っていた。
ソファはじーっと冷たい目をせんろに向けて仕事ぶりを見ていた。
ソファは思った。先生は結構二枚目なのですね。と思った。
のぞみさんは今日は随分と集中しているな。と思った。
そう思うとのぞみさんはせんろさんも結構可愛い所があるのね。と思って、コーヒーを進めた。のぞみがコーヒーを進めるとせんろは、「ありがとうございます。」といった。
せんろはコーヒーがアイスコーヒーだったので季節が夏に近づいているな。」と思った。
そう思うとリノとソファをプールや海へ連れて行こうと思ってやる気が出た。
のぞみさんに、「アイスですか。もうそんな季節ですね。もうひと頑張りです。」と笑った。
のぞみさんは「はい。そうですね。今日は暑いのでアイスコーヒーです。」といった。
リノは「うわぁ。コーヒーだ。リノネ。おれんじじゅーすがいいな。」と思ったが「約束だよネ。」と言って指導室から出なかった。
その時のせんろの表情はキラキラとしていた。
リノはこの表情にこの場面にうっとりとしていた。
おや、血は争えぬものである。リノは実はある場所にいたものである。
リノが生まれたのは、リノがいた所は先の戦のころである。
リノの親も血をかき分けて進んだんだろう。リノの記憶とは前後があるかも知れないがリノの元は声優さんである。芸が達者で、人気者である。そんな人の欠片である。勉強熱心に違いない。いや、ここは少し勝手が違ったか。楽しそうにリノはその姿を見ているのでお勉強とは違ったかもしれない。
とある父が守った娘の思いの欠片をとある男が守っている。心の欠片をもったおもちゃのソファと一緒に。
リノは思った。リノのパパってどんな人。と思った。
きっと、良い人に違いないよネ。リノ、幸せだなあ。リノとフフッと笑った。
そう思うとリノはせんろに「テツロウ。父の日。おめでとう。」と元気に言っていた。
書き物に集中しているのでせんろには聞こえぬようである。
しかし、ソファにはわかった。リノ。少しだけお姉さんになりましたね。と冷たい声で優しく言った。