私は、山本くんは、素晴らしい料理人だと思う。いつも、真っ直ぐで、一生懸命で、お子様ランチから、グラタン、ハンバーグ、魚のムニエルまで、一生懸命に、真剣に作っている。
肉をこねるのも、魚の下ごしらえをするのも、一生懸命で、私も、料理人をやってるからわかるけど、お肉やお魚の下ごしらえって、大変なんだよね。お肉も、お魚も、この下処理をちゃんとしないと、ダメになってしまうんだよね。
まあ、全く、ダメじゃないけど、料理としては、ワンランクさがんじゃね。って、いうか、
ここを大事にできるか、できないかで、料理と、料理に差が生まれれんの。これをやるのは、大変なんだよね。なかなか、気を配らないと、できないの。これをやる時は、意識を高めないといけないから、私、いつも、少し、気を張ってしまうの。
でもさ、山本くんは、この作業も、楽しそうにするの。小さい子が、好きなことをして、楽しむみたいに、楽しそうに、お魚の骨をとったり
お肉を綺麗にしたり、野菜も、丁寧に優しく、切っていく、こんなこと、なかなか、できそうでできない。しっかりと、何かをするということは、とても大事なことなんだ。だけどさ、たまに、めんどくさいなと思う。でも、それを山本くんは、それをしっかりと、やってる。
私も、やってるけど、もっと、自然にやってる、流れるように、楽しんでいる。
目をキラキラさせながら、私、どうやったら、できるのかな。と思って、聞いて見たんだよね、この間。そしたらさ、山本くん、
「何、むずかしくかんがえとんの?外崎さん。
こんなん基本や。そうやな。外崎さん、オカンのお手伝いみたいなもんや。おかんのな。あら、しんちゃん、こっちきて、ごはん、手伝ってくれんか。」って、そいのと、一緒やん。分かる。?まあ、そうやって、楽しんでやってみることやんね。なんでも、難しく考えると、つかれるさけ。たまには、そういう風に、簡単に、楽しゅう考えてみるんもさ。僕は、わるないな。」と、思うよ。また、笑ってた。
私、その話を聞いた時、ちょっと、びっくりしたんだよね。だってさ、私たちは、お客様から、お金をもらって、その中で、お料理を作るわけじゃない?だけど、山本くんは、そういったから、山本くんは、すごいなって、思った。
私、料理好きだけど、どこか、これは、お仕事やからね。って、やってた。だけど、山本くんは、そうやって、楽しんで、楽しそうに、やってたから、私は、とても、すごいなって、思ったの。
山本くんの料理は、どれも、これも、下準備をちゃんとしているから、素材の味が、わかるの。リーフリィの野菜も、かなでやまの魚も、素材の味が、分かるのね。これってさ。中々、できることじゃなくね。?って、思うわけ。
お肉も、あんまり、臭みがなくて、とても、あぶらが、優しくて、ぜんぜん気持ち悪くならないの。だから、私は、山本くんの料理が、好きなの。ずっと、食べていたいって、思う。すげえよ。こんな事を、こんな繊細な事を、楽しそうにやるなんて、すてき。私は、そう思ったのね。
山本くんの料理は、ある時、かなでやま、ワコクで、大人気の植木等に、褒められたのね。
植木等は、テレビとか、映画で、活躍している有名人で、私もよく、テレビとかで、見てたから、山本くんが、私にそういった時、私は、よかったやん。山本くん。って、褒めてあげた。
そしたら、喜ぶかな。と思ったけど、山本くんは、「いや、褒められたことは、嬉しいんやけども。まさか、本物が、きとって、本物に、褒められるとは。」と、少し、固まってた。
私は、なんだよ。お前。自信を持てや。と、思って、山本くんの肩をパンと叩いた。
さしたら、山本くんは、痛い。なにすんの。」って、痛がっていた。ちょっと、ちからがつよかったかな?まあ、いいじゃね。と、思って、もう一回、叩いた。
そしたら、山本くんは、また、痛がって、なにすんの。って、笑った。
その笑顔は、可愛らしかった。なんだか、子どもみたいで。ほんと、可愛かった。ずっと、みていたいって、思った。
だけど、その後、有名人に褒められて、山本くんは、有名人になって、私と、山本くんの働くお店も、有名な店に、なってしまった。
最初は、すげえって、思ってたけど、けどさ、
山本くんは、仕事に追われるようになって、だんだんと、笑顔がなくなって、いったんだよね。
私、見とって、つらかった。
ハンバーグだって、グラタンだって、お魚のムニエルだって、リーフリィの野菜のサラダだって、うまいのに。
どうしてって?ねえ、私は、美味しいと思うけど、美味しいよ。山本くんのは。ねえ、しんちゃんのは、美味しいって。なんで、そんなに、自信がないの?なにを怖がっているの?どうしたの?テレビの、人が、褒めたから、人がたくさんきて、小さくなって、びっくりして、いやになったの?そうなの?って、思った。
山本くんは、変わってしまった。
みるみるうちに、笑わなくなって、暗い顔をして、町田君と会う時だけ、とってつけたように明るくなって、心配せんでって、
だけど、私は、おかしいと思うの、昔の山本くんに戻って、欲しい、あの子供みたいに楽しそうに料理をして欲しい。そう思った。
そう思うと、山本くんのために、全部止めないといけないって、このままいったら、山本くん、壊れてしまう。って、思った。そう思ったら、私は、あのスープに、あるものを入れてしまっていた。
こういうことは、したら、いかんの。でも、やらないと、いけないの。今は、そう思うと、
なんだか、いい事をしているような気になったんよね。
そこまで、私が話すと、あのせんろとかいう国会議員が、「馬鹿野郎。お前は、なにをやってんだ。お前は、自分かってだ。」って、怒鳴った。
私は、ふと、その声で、びっくりして、我に返った。
なんだか、私の話をしていると、いい気持ちになってしまって、悪くないって、思ってしまっていた。
そう思って、遠い目をして、とろんとしためをして、その議員を見たら、その議員は、
このやろう。料理をなんだと思ってるんだ。
待ってくれ、あなたは、料理人だ。
料理を作るものだ。そんな人が、そんな、神聖なものを使って、自分の大切なものを使って、人に嫌な気持ちにさせようということは、あってはならない。」と、いって、めっちゃ、怖い顔をしていた。
さっきまで、猫みたいな、にゃんにゃんいいそうな顔をしていたのに、今は、鬼みたいに怖い顔をしている。
その顔を見た時、思った。私、こいつに殴られるって、男なのに、こいつ、女に、手をあげるって、そう覚悟を決めた時。そういうのは、もうはやらねんだよ。ジジイが。と思ったけど、
私は、覚悟を決めた。
その時、近くにいた、あの女の子が、やめてって、いって、私に、抱きついてきたの。
そしたら、その女の子は、「外崎さん、私、外崎さんの気持ちわかります。私だって、私の好きな人が、大好きなこと、大切なことで、小さくなって、いって、しまったら、もうやめて、もうやめてよ。休んでも、いいんだよ。」って、言います。怖くなって、小さくなっていたら、大丈夫だよ。って、むぎゅうって、今みたいにしてあげるよ。って、思います。だから、もう、怒らないでください。嫌だよ。って、思ったら、いつでも、私に言ってください。外崎さんは、一人じゃありません。もし、一人なら、私が、今から、外崎さんのお友達になります。だから、怖いって、嫌だよ。って、思わないでください。お願いします。」と、いって、離れなかった。何回も、うるせえよ。あっちいけよ。と思ったけど、離れなかった。
そうか、私は、一人じゃ、ないのか、そう思うと、自然と、涙が、出てきた。
なくと、大声を出して、話していると、なんだか、疲れてきた。そう思うと、その女の子の柔らかくて、温かい体が、私を優しく包んだ。
私は、その中で、ふわあ。って、なって、力なく、その子の方へ倒れるように、包まれていった。
そんな私をその子が優しく、受け止めてくれていた。
それを感じると、さっきの、議員の、そんなことは、あってはならないと、いう、言葉が、私の心に、突き刺さった。
でも、今は、なんだか、いい気持ちで、そんなんどうでもよかった。
けれど、私は、それだけのことをしてしまったのだ。
その時、そう思った。
もっと、早く、この子に、会いたかったな。そしたら、恋の話とか、めっちゃ、したのにな。と、私は、思った。