おてもやん。小寺勘十郎一家。パラレルファクター。
今日、ワタシは、学校から、早く帰ってキタ。
時刻は、15時40分。いつもより、20分ホド、早い。
ワタシの部屋の外から、コーン。コーンと、音がする。
きっと、パパが、石を削っているんだわ。私は、そう思った。
仕事場の方から、トンさんが、「おーい。今のもう一回だー。」と、声を張り上げてて行ってル。オシゴト熱心ナノね。と、思う。トンさんは、いい人だナ。って、思う。
私が、小さなとき、まだ、あーちゃんが、生まれてなくて、美夜ちゃんも、うちに来てなかったトキ。私に、「おや、こづえさん。いい子だね。パイナップルの飴を上げようかいね。」と、パイナップルの飴をくれたノ。
黄色くて、まあるくて、甘かったナァ。本当に、パイナップルの缶詰のパインナップルがネ。
そのまンま、はいってるみたいナノ。おいしかったナァ。
トン吉さんがね、ソンナコト、してくれるモンだから。
私、小さい時、トン吉さんと、結婚スルノー。って、言ってたみたい。
私が、そういうと、パパがね、こづえ。女がな。そんな事、言うもんじゃないんだ。って、怒って、その度に、ママが、子供のいうことですから。お父さん。許してやってくださいな。
って、頭を下げてたみたいなの。
おばあちゃんは、そういう時、いつも、そうだよ。勘十郎。許してやりな。こんな、小さな子供のいう事だよ。気にしてたら、仕事にならないよ。」って、いって、ケラケラ笑ったそうよ。私ネ。そのハナシ、聞くとき、おばあちゃんって、この時から、シニカルなんだって、思ったわ。私、あんまり、覚えてないノ。あーちゃんが、生まれる前の、ママやパパの事。
おばあちゃんの事。なんでだろウ。って、思う。
私、あーちゃんが生まれてなかったトキ、あんまり、いいコト。なかったのかナ。
でもネ、小さいトキ、テレビで、世界名作劇場って言うアニメがネ、やってテ、ソレを、
よく見テた。記憶は、あるのネ。海の向こうのカメリアや、インディラ。海の向こうの家族や女のコたちの、一日。外国では、お父さんやお母さんって、いわないで、ママ、パパって、いうコトも、その時、しったノネ。
それ以来、私、お父さんと、お母さんの事、ママ、パパって、よんでるワ。だって、カメリアの女のコ、みたいじゃない。?その方がネ。
見たナァ、いろいろ、本当に、たくさん。ちょうど、コノ、時間ぐらいだったかナ。
私は、そう思って、一階に、おりて、居間のテレビを見に行った。
アシは、改めて思う事ジャ、ないかも、知れなイ。けど、重かった。
そのために、杖が、あるんだけど、あーあ。こづえの足は、ヨクならないナァー。^^
って、思っちゃった。でも、嫌だァ。って、思ったって、コレも、私の一部よネ。って、思うと、ちょっと、ユルソっかナー。って、オモウの。
ダメね。アタシって、あーちゃんが、いないと、お姉サンに、なってないと、ダメッ。ダメッって、なっちゃウ。でも、私、メソメソ、シナイヨ。だってェ、お姉サンなんだから。
私は、そう思いながら、居間のテレビの前にいった。
でも、先客がイタの。前のお客サン。おばあちゃんネ。おばあちゃん、民謡を聞いてたワ。
あーあ。世界名作劇場、見たかっタのニ。メソメソ、したトキ、モウ、嫌ぁー。って、思った時、よく見てタのにナァ。
おばあちゃんの方が、早かっタみたいネ。
おばあちゃんは、私の顏を見ると、「おや、こづえ、あんた。早かったわねえ。今日は。」と、眠そうにいっタの。とっても、眠そうで、ちょっと、可愛かっタ。
なんだか、赤ちゃんみたいナノ、つぶらな瞳でネ。良かった。
私は、そう思うと、アハハって、笑って、おばあちゃん。ちょっと、チャーミングなのネ。
って、思って、シニカルなだけじゃ、ないんだッテ、感心しちゃっタァ。ちょっと。
あーちゃんだって、パパだって、ママだって、おばあちゃんだって、お美夜ちゃんだって、いい所が、あるワ。みんな、ちょっと、ギスギスしてる所がアルけど、いいトコロがあるノ。
私にも、あるかしラ。探してみるわ。
そう思って、私は、おばあちゃんと、テレビの民謡を見たノ。
ちょうど、おてもやんだった。
おてもやーん。
アンタこの頃―。嫁入りしたでは、ないかいナ。
嫁入りしたこつぁしたばってん ご亭どんが ぐじゃっぺだるけん。 まあだ杯はせんだっタ。
有名なこの部分は、ワタシも、歌ったノ。そしたら、おばあちゃん。
「こづえは、歌が上手いねぇ。あたしゃ、、感心したよ。」と笑った。
その時、私、嬉しくって、「おばあちゃん。ソウ。ありがと。」って、おばあちゃんに行ったワ。おばあちゃんが、ソウ、言った時、嬉しかったナァ。
ここまでは、聞いた事があったの。だけど、このおてもやんには、続きがあったノ。
一つ山越え も一つ山超え あの山越えて
私やあんたに惚れとるばい 惚れとるばってん いわれんたい。って、続くのネ。
コレ、聞いたトキ。これ、ワタシの家族の歌。私たちの歌だァ。って、思ったの。
ああ、一つ山、越え、も一つ越えて、あの山超え、
わたしゃ、あんたに惚れとるばい。惚れとるばってんいわれんたい。
楽しい歌なのニ。楽しいうたなのにネ。こう続ク。
この歌って、フシギね。
そう思ったノ。そう思うと、心の中がしんみりとしたノ。
おてもやーん。
楽しい歌なのに、なんだか、冷たい心も、ソレと、なく。
カナシイわ。って、言わずに、それとナク、歌ってタ。
それって、とっても、強いと思ウ。
そんな歌って、とっても、いいと、思うノ。
私が、そう思っていると、あーちゃんの声がした。あーちゃんは、眠そうに、
ただいま。といっていた。
私は、ソレを聞いて、モぅ。あーちゃん。だらしない。と思った。
だけど、ワタシは、そんなココロを隠しながら、おかえり。あーちゃん。あーちゃん。おかえリ。と、元気に言った。
おてもやーん。
おてもやん あんたこの頃嫁入りしたではないかいな。
嫁入りしたこつぁしたばってん ご亭どんが ぐじゃっぺだるけん。 まあだ杯はせんだった。
村役 鳶役 肝煎りどん あん人たちのおらすけんで あとはどうなときゃあなろたい。
ああ、一つ山、越え、も一つ越えて、あの山超え、
わたしゃ、あんたに惚れとるばい。惚れとるばってんいわれんたい。