せんろの声。政治家稼業
ここ、奏山は、ワコク有数の魚どころとして、知られている。
春には、春の魚が、夏には、夏の魚が、秋には、秋の魚が取れる。冬には、冬の魚が取れる。
ここ、奏山の海には、その季節ごとの顔があるのだ。
この奏山で、有名な料亭がある。せんろ議員が、このんで、使っている店である。
名を、桔梗屋と、言った。紫色の暖簾が目じるしのワコクの趣が、楽しめる料亭だ。
春には、この桔梗屋のお庭で、花見の茶会が開かれ、夏の夜には、薪能が開かれる。
それは、また美しく、和の佇まいを感じさせる。
そんな店で、せんろ議員は、薄い青が入った色眼鏡をかけている男と食事をしていた。
せんろは、「いや。いいお店ですね。桔梗屋さんは。魚が違う。焼き物も、まったく焦げ臭さがありませんね。お酒も、濁りがない。」と、喜んでいた。 津山議員は、「そうですね。この店はわが党の心の味ですね。」と、笑った。
津山議員は「今日は、私と飲みましょう。女性がいなくて、もうしわけありません。
もう少し、花があれば、良かったのですが。今日は、昔のように飲みませんか。」と、言った。津山議員は、せんろ議員の大学時代の親友。政治研究会時代からの親友だ。
津山議員がそういうと、せんろ議員は、「いや、いいのよ。女の子なんて、いらないもん。」と、可愛い声で言った。津山議員は、その声を聞いて、驚いた。なぜなら、急に昔の親友と酒でも、飲もうかと言っていたところ。小さい女の子の声がしたからだ。
それを見て、津山議員は、はて、今、小さい女の子の声がしたような。と思った。
それを見て、せんろ議員は「どうしたの。?津山ちゃん。」と、笑った。
津山議員は、その顔を見て思った。ああ、テツロウは、こんな奴だったな。と思った。
せんろ議員とは、昔。政治の話や経済の話しで盛り上がったものだ。と思った。
そのころのせんろは、黒縁眼鏡をしていて、髪型もよく、顏もまあ、良かった。
大学の女子学生たちからも、人気があったような気がする。
そのころは、まだ、おかまの声をだしたり、可愛い女の子の声を出したりはしてなかったような気がすると思った。けれど、たまに、女の口調になって、ダメヨ。とか。違うわ。と、言っていたことはあったな。と思った。
そう思った津山議員は、「テツロウ。君は、まだ、そんなことをしているのか。」と聞いた。
津山議員がそういうと、「うん。そうよ。今日は、親友として飲むんでしょ。」と、また可愛い声で返した。津山議員は怒ろうとしたが、くっと、堪えて、「テツロウ。よく聞きなさい。私は、あなたの秘密を知っています。どんな人なのかも。しかし、私たちは政治家だ。何があるかわからない。明日、新聞に失言として、それがのるとも、分らない。言葉には気をつけたまえ。」と、言った。
せんろは、「そうね。皆から、言われるわ。よくわかってる。アタシ。」と、可愛い声で言った。
津山議員は「君の秘書の清水さんが、可愛そうだよ。」と、いった。
そして、こういった。「清水君の噂はよく聞いているよ。せんろ議員がそそうをしないように、書類だ。プランニングだ。すべてやっているそうじゃないか。しかも、毎年発行されるワコク清和党のプロフィールにも、尊敬する政治家の欄に、でかでかと、君の名を、
せんろ テツロウ。と、書いているそうじゃないか。それをどう思うかね。」と、怒った。
そして、こう続けた。のぞみさんは苦しいだろう。こんな小さい女の子だか、おかまか分らない議員の秘書になって、と怒った。
だんだんと、声が大きくなるのがわかった。
せんろは、それを聞いて、「怖―い。」と、泣いた。
それを見て、津山議員は、ここまで言ってまだ聞かぬか。と怒った。
が、せんろの顔を見て、言いすぎたと思った。
酒が回ったかな。と思った。
せんろは、「ごめんね。アタシ。いや、私は、ふざけてしまうんですよ。私の悪い癖です。」と、言った。その時、せんろが元の声に、男らしい声に戻ったので、これは、応えたかな。」と思った。
そう思うと、せんろのプライベートな部分を言ってしまったと思った。
津山議員は、知っていた大学の時から、おふざけが好きで、政治と同じくらい面白いことが好きなのを知っていた。耳がいいので、ものまねも、好きで、良くしていることも知っていた。けれど、清水さんの気持ちを考えると、津山は言わねばならない。と思っていた。
あんなに若くて、健気で勉強熱心なのぞみさんの事を思うと、申し訳なくて仕方がなかった。
公人でなければ、もう、お付き合いを始めているはずだ。と、思っていた。
だが、相手の男、いや、ぼうやが、これでは、と思った。
そんな気持ちもあって、津山はせんろに、「申し訳ない。テツロウ。そんな所が君らしいのは、誰よりも、分っているつもりだ。その辺は、私は、清水さんよりも、詳しいよ。」と謝った。
津山が、頭をさげると、せんろは可愛い声で、「ごめんね。津山くん。」と、言って、
男の声で、「それでは、少しづつ、こちらで、いる時間を延ばしましょう。」と、言った。
津山は、無理はするな。と言ったが、せんろが、そういった。と喜んだ。
でも、心配になって、せんろに、「テツロウ。大丈夫か。」と、聞いた。
それに、せんろは、「ウーン。大丈夫よ。」と、答えた。
いってるそばからこれかと思った。
しかし、津山議員がそう思っている時、せんろは、咳ばらいをして、
それでは、今日、この宴会から、私でいる時間を延ばしましょう。」と真面目に言った。
それから、せんろと津山は、せんろは男のいつもの男の声で、津山議員は、エリートコースの敏腕議員というふるまいで、政治経済、ワコクの発展。かなでやまの今後について話した。
お酒ものんだ。津山議員は、好きな洋酒をがぶり、がぶりと飲んで、せんろも、お酒をいつもより飲んだ。だが、二人とも、悪い酒だとは思わなかった。
酒を飲むと、夜も更ける。夜も更けると、当然、秘書が出る。
のぞみさんは、せんろ議員を迎えに行った。お酒はのむが、少々しか、のまないせんろ。
のぞみさんも、お酒はあまり必要以上に飲まないように。」と、注意している。
しかし、今日は飲まなかった。
津山議員と、桔梗屋の板長さんに話を聞きながら、のぞみさんは、
今日は、せんろが大変、ご迷惑をおかけしました。と、頭を深々と下げたのぞみさんの恰好は、深夜だというのに、パリッとしたパンツスーツを着て、お化粧も、しっかりとしていた。
桔梗屋の板長さんは、それを見て、「なんと美しい秘書さんだ。お座敷の芸子さんよりいい肌だね。」と、うっとりしていた。
津山議員は、けろっとした様子で「清水さん。今日は、せんろが何をいっても許してくれないか。?せんろは、酒をのんで、暴れたわけじゃないんだ。」と、いった。
のぞみさんは、津山議員の困った顔を見て、いいんですよ。お気になさらずとに。」と、言った。そういったのぞみさんは、津山さんに案内されて、奥の座敷へ行った。
奥の座敷のふすまのふちに、殿の間と、書いてあった。
のぞみさんは、それを見て、ふふ。っと笑った。殿の間になているなんて、良い身分ですね。と笑った。
のぞみさんが、ふすまをあけると、その殿は寝ていた。
のぞみさんは、帰りますよ。と、せんろに怒った声で言った。
のぞみさんがおこると、せんろは、ウーン。とうなって、
ああ、のぞみさん。オハヨーございます。と、可愛い声やら、男らしい声やらがまざりにまざった声で言った。
そして、今日は、凄く疲れました。会合よりも。イカンせん僕、イヤ、アタシの今後の事ですからね。」と、言った。その声も、混ざりに混ざった声だった。
変に声の大きさも小さく、よく聞き取れなかったが、せんろの事をよく知っているのぞみさんにはよくわかった。
のぞみさんは、自分の今後と言ったのがよくわからず、また変な事、言ってる。と思って、
せんろさんの体を起こしながら、「何、言ってるんですか。」と、怒った。
そして、やってられないと思って、体を起こそうとした。
しかし、せんろの体は重く、男らしかった。いつも、せんろは、自分の事は、可愛い女の子風と、言っているが、男らしく頼りになる男らしい体だった。
のぞみは、こんな大きな体から、可愛い声、女の子の声、それに、だわ。ヨ。といっている女性的な声がよく出るなと思った。
そして、せんろ議員は、トレーニングを頑張っているのね。と思った。
そう思うと、ちょっと、可愛いな。と思った。
そして、日に日に上手になっているんだろうな。と思った。
せんろの胸は広く。筋肉はあんまりなかったが。大きいなと思った。
その体を見ていると、その努力を政治にいかしてください。と思った。
そう思うと、のぞみさんは、察しがついた。
今日は、津山議員に無理を言って、時間を作ってもらって、私の新技とか言って、お酒を飲みながら、発表会をしたのね。まったく。年はいくつなの。まったく。と思った。
そう思うと、起きてくださいせんろさん。とせんろに言っていた。
せんろの体は、びくともしない動かない白魚のような柔らかなのぞみさんの手では、無理だった。
汗ばかりが出る。動かない。もう勝手にして。と思った時。
せんろは、可愛い声で、のぞみさんといって、のぞみさんを抱っこした。
お酒の匂いがして、臭いと思ったが、のぞみはびっくりしていた。
せんろは、ぎゅっと、のぞみを抱っこして、可愛い声で、「あの、のぞみさん。私。トレーニングをしたんです。昔は、普通の私の時間の方が長かった。いつも、ご迷惑をかけていますね。いい声でしょ。練習したんですよ。と、ここまで、議員らしく話して、あとは。ハワワ~ッ。と可愛くあくびをして、「ごめんねー。眠いの。」と、可愛い声で言った。
のぞみさんは、なにすんのよ。と思った。だが、せんろ議員がふざけない時間を作る練習をしたことは分った。
のぞみさんは、どきどきしていた。せんろさんに抱っこされて。
いや、逆か思った。せんろは、可愛い声で、「いい声でしょ。」と、言っていた。
起きたら、絶対。ナニコレ~。と、言うだろう。
せんろ議員は、今、何を思っているのか。満足そうに寝ていた。
のぞみの胸の音だけが鳴っていた。