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春がやってきた。パラレルファクター。

おみよは、外を見た。貫太郎の家の庭には、桜の木がある。ためさんが、ここに桜でも、植えたら、春には、花見酒ができるなぁ。といって、貫太郎に頼んだ、ためさんの先輩の岩さんにも、頼んで、無理を言って、植えてもらったのた。

桜を育てるのは、大変だ。毛虫との戦いだ。

貫太郎は、一生懸命、薬をまいて、一生懸命にそだてた。夏には、花は、散って、しまうが、葉桜が青々として、青空に、映えて、美しい。冬には、雪が、桜の木に積もり、少し、物悲しくなる。貫太郎は、雪で、桜の木が、折れてしまわないように、岩さん、ためさんに、言って、雪囲いを作る。その場合は、男手が、必要なので、シュウヘイも、手伝う。シュウヘイは、面倒臭そうに、していたが、貫太郎が、

「シュウヘイ、雪囲いを作るぞ。手伝え。」と、ドラのように、大きな声で言うと、シュウヘイは、「わかったよ。まったく。」と、言って、寒い、寒い、と言って、庭に出た。

寺内家の雪囲いづくりは、先代、つまり、貫太郎の父の代からの伝統行事で、毎年恒例なのである。この時、家中の男衆は、全員、この、桜の木の雪囲いをする。

雪囲いというのは、雪国で、よく行っているもので、特に、おきんばあちゃんの生まれ故郷では、寒くなって、そろそろ、雪が降ってくるかもしれない。という、頃になったら、よく、作るのだそうだ。

ということは、寺内家で、行っている、雪囲いづくりは、おきんばあちゃんと、先代、貫太郎の父に、深く、関係しているかもしれない。

しかし、今は、それは、置いておくとして、

この桜の木は、寺内家の男衆が、みんなで、協力して、守ったものなのだ。その美しさは、格別である。

おみよは、そんな寺内家の桜の木を見るのが、好きだった。

おみよは、春よ。こい、早くこい。早く、綺麗な桜を見せてちょうだいね。と、毎日、眠る時に唱えて、眠った。

朝起きると、「おはよう。桜の木。」と、桜の木にご挨拶をする。

おみよは、桜の木が好きだった。

おきんばあちゃんに、きついことを言われたり、親分さんに、叱られたり、して、悲しい気持ちに、ふと、記憶の中の、お母さんの姿を思い出して、家に帰りたくなった時、おみよは、桜の木を見た。

桜の木を見ていると、私も、頑張ろう。私も、この桜みたいに、空に向かって、のびのびと、伸びよう。という、気持ちになった。

おみよは、私の名前は、みよだけど、桜ちゃんってのも、よかったわね。と思う。

桜は、美しい。春には、綺麗な色の元気な花を咲かせる。夏には、葉桜。秋には、少し、紅葉をする。冬は、寺内家では、雪囲い。これが、

この、桜の木の四季なのだ。おみよは、今日の、午後、ふと、庭の桜の木を見た。

外は、暖かかった。

おみよは、あら、暖かい。もしかしたら、おきんさんが、お昼寝をするかも、知らないわ。と、思った。

今は、貫太郎は、作業場で、仕事をしている。里子は、買い物。おきんばあちゃんは、

かかりつけのお医者に行っている。シュウヘイと、しずえは、パラレルファクター学園に行っている。

今の時間は、いつも、騒がしい寺内家にあっても、少し、静かな時間かも、しれない。

聞こえてくる音と、言えば、貫太郎、ためさん、岩さんたちが、石を削る、トントントンという音だけだ。

おみよは、その音を聞きながら、庭の桜の木を見ていた。

職人たちが、トントントンとやる音が、おみよの耳に、優しく響いていた。

おみよは、その音を聞きながら、「もう、春なのね。」と、つぶやいた。