今日の貫太郎は、珍しくゆったりとしていた。
今日は、春分の日で、珍しく、店を休んだのだ。しずえは、今日は、学校のおこと部があるとか、なんとかで、学校へ出かけた。
シュウヘイは、るんるんという風に、陽気に、
ちょっと、友達のところへ行ってくるよ。と、里子にいって、友達の家に、遊びに行った。
貫太郎は、貫太郎は、そんな二人を見て、まったく、たまの休みぐらい、家でゆったり、まったりしたら、どうなんだ。と思って、朝から、
腹を立てたが、しずえには、「パパ、ごめんね。部活なの。友達に頼まれちゃって、ごめんなさい。」と、謝られた。
シュウヘイも、「えー。俺、友達のところへ行ってくるよ。いいだろ、遊びに行ってくるくらい。」と、言われた。
貫太郎は、そんな二人をぶっ飛ばしたかったが、休みくらい。好きなように、させてやるるか。と、思って、ぶっ飛ばさなかった。
二人が、出て行くと、今度は、家の中では、おみよちゃんが働いていた。休みだというのに、洗濯物をたたんでいた。
貫太郎は、それを見て、「みよ。今日は、祝日だぞ。みよもたまには、休め。わかったな。といって、今日は、休みにしてあげることにした。
しかし、みよちゃんは、「親分さん。気持ちは、ありがたいのですが、この間、お休みをいただいたので、今日は、働きます。」と、いった。
みよちやんがそういうと、貫太郎は、「いや、いいんだ。今日は、いい。今日は、休みだ、好きなところへ行ってこい。」と、いった。
貫太郎がそういうと、みよちゃんは、少し、困っていた。おみよちゃんが困っていると、里子が、「あら、おみよちゃん、お休みの日も、働いているのね。偉いわね。でもね。今日は、いいのよ。こっちで、お菓子を食べましょう。」と、いった。
おみよちゃんは、里子がそういうと、「いいですか。?でも。」といって、戸惑った。
おみよちゃんが戸惑っていると、里子は、「本当に、みよちゃんは、いい子ね。しずえに、見習わせたいわ。そうね。じゃあ、それ、終わったら、こちらにいらっしゃい。」と、いって、笑った。
里子は、笑うと、「あ、お父さんも、どうです。?美味しいですよ。」と、いって、笑った。里子が笑うと、貫太郎は、「そうか。」と、いって、里子の方を見た。里子は、クッキーをお皿に盛っていた。
貫太郎は、口数が少ない。おう。とか、そうか、とか、ああ。とか、しか、言わない。
貫太郎が、長々と話すのは、怒っている時か、石の話をしている時か、人にお願いをする時だ。
貫太郎は、縦も、横も大きく、いつも、三食、もりもりご飯を食べているのに、とても、口数が少なく。普段の声は、怒っている時より、小さめだ。
貫太郎は、里子に、「そうか。」と、いうと、心なしか、嬉しそうに、こちらに、のっし、のっしと、やってきた。しかし、顔は、笑っていない。笑っているというより、ちょっと、嫌そうである。「なんだよ。お菓子は、食べないんだよ。俺は。」と、いう風である。
しかし、貫太郎は、そこから見ると、ちゃぶ台のちょうど真ん中になる自分の席に座ると、
小さい声で「里子をお茶くれ。」と、いった。
里子は、貫太郎がそういうと、お父さんたら、お菓子よ。って、言ったら、すぐ来たわ。お父さんも、お菓子が好きなのね。と、思って、笑った。
里子は、そう思って、笑うと、台所に、「はい。お父さん。今、お持ちします。」と言って、台所に、お茶を沸かしにいった。
里子が、お茶を沸かしに行くと、おみよちゃんが、洗濯物をたたんで、こちらにやってきた。
おみよちゃんは、ちゃぶ台に座る時、お菓子を見た。そのお菓子は、クッキーでとても、美味しそうだった。チョコレートがついたのや、緑色のクッキー、お抹茶のも、あった。赤い砂糖の飴がついたのも、あった。
おみよちゃんは、そのクッキーを嬉しそうに見ていた。そのクッキーは、外からのお日様の光を受けて、キラキラと、光っていた。
おみよちゃんが、クッキーを見る時、顔を近づけると、とても、甘い匂いがした。
その甘い匂いは、とても、いい匂いで、
「素敵だわ。奥様。ありがとう。母さん。ありがとう。 」と、心の中で思った。
おみよちゃんが、そう思っていると、貫太郎は、おみよちゃんに、「みよ。そんなに、珍しいか?みよ。いい菓子だな。こりゃ、上等なもんだぞ。」と、低く、優しい声で言った。
おみよちゃんは、貫太郎がそういうと、
「親分さん。私、こんな、綺麗な、お菓子、見たことないです。だから、素敵だな。って、思って、親分さん、クッキー、おすきなんですか?」と、聞いた。
おみよちゃんが、そういうと、「ああ。よく食べるよ。」と、言った。
貫太郎は、この時、はずかしそうにしていた。
なぜかというと、貫太郎は、すき、とか、嫌いとか、素直に、いうのが、苦手なのだ。
貫太郎が、そういうと、おみよちゃんは、
あら、親分さん。かわいい。と、思ったが、
「おう。おう。俺が、かわいいって、どういう事だよ。俺は、この家の主人だ。主人と、いうのはな、敬うもんだ。それをな。かわいいたぁ、どういう事だ。」とか、なんとか、言って、癇癪を起こすので、言わないでおいた。
おみよちゃんが、そう追っていると、おきんばあちゃんが、やってきて、おみよちゃんの隣に座った。おきんばあちゃんは、おみよちゃんの隣座ると、「おや、おや、いい匂いがするね。みよ。あんた、これ、私に黙って、食べようとしたね。最近のお手伝いさんは、図々しいね。」.と、言って、おみよちゃんをからかった。
おきんばあちゃんが、おみよちゃんをからかうと、貫太郎は、おきんばあちゃんに、「ばあちゃん。みよは、家族だ。お手伝いじゃない。」と、怒鳴った。その時の貫太郎は、怖かった。
おみよちゃんは、その時、あったことはないけど地獄のえんま様と言う人は、こんな人なんじゃないかと、思った。できれば、私は、会いたくないな。と思った。
貫太郎に、怒鳴られると、おきんばあちゃんは、「あー、怖い。怖い。」と、言って、小さくなった。
おきんばあちゃんが、そう言うと、貫太郎は、「ふん。」と、鼻を鳴らした。
おみよちゃんは、その時、とっても、怖かった。親分さんの顔が、声が、怖かった。
地獄のえんま様のようで、鬼みたいで、怖かった。おみよちゃんも、その時、自分が、怒られたわけじゃないのに、自分も、おきんばあちゃんと、思わず、小さくなった。
でも、この時、おみよちゃんは、怖いけど、貫太郎に、怒鳴られて、怖い思いをしたけれど、
嬉しかった。嬉しいなと、思うと、おみよちゃんは、「お父さん。」と、小さく、言った。
おみよちゃんが、そう言うと、
里子が、「はーい。お父さん、お茶ができましたよ。」と、言って、貫太郎と、おみよちゃんの分を持ってきた。
聡子がお茶を持ってくると、おきんばあちゃんが「里子さん。私にも、くれるかい。?」と、言った。
おきんばあちゃんが、そう言うと、里子は、
「あら、おばあちゃんも。わかりました。」と、言って、やかんから、お茶を注いだ。
そのやかんは、貫太郎のお腹のように、丸々としていて、とても、大きかった。
その時の里子の顔は、とても、綺麗だった。
おみよちゃんは、その顔を見て、私も、こんなお母さんになりたいと、思っていた。
そう思っていら、おみよちゃんの耳に、お茶が、湯飲みに入る音が、トクトクと、優しく、響いていた。
おみよちゃんは、その音を聞きながら、幸せな気持ちになっていた。この音をずっと、聞いていたい。と、おみよちゃんは、静かに、思っていた。