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おやごころのまき。

おやごころのまき。

 

今日、せんろは久しぶりに実家へ帰った。当代のテツノスケに家に帰るように言われたからだ。せんろの家は太古の昔から代々続く、刀工職人の家で、現在は、せんろの父の兄の息子が継いでいる。せんろ一族の刀は国中で知らぬものはいないと言われる一族で、刀にも、奏山製のものと小野道製のものがある。小野道は温かい地域で、奏山は寒い地域だ。気候が変われば鋼の質、固さも違う。奏山のものは固く重い。女性や子供には扱いにくい。小野道のもは軽く柔らかい女性や子供には扱いやすい。

しかし、あまり力いっぱい振ると折れてしまう。男性や力自慢には小野道製は向かない。であるものだから、技の小野道。力の奏山と言われることが多い。なんだか、このように書くと大相撲のお相撲さんの名前のようである。お相撲さんには刀はいらぬであろう。しかし、露払いというのも聞いたことがあるから、一概にはいえぬ。言えぬというと価値観もそうである。と、せんろは思った。

家に戻ると職人さんたちにあいさつをする、せんろは皆からおお。若先生。お帰りになった。期待してますよ。若先生。と言われる。せんろはありがとうございます。ありがとうございます。とあいさつをする。せんろは刀の鍛冶場が好きだった。

鋼を鍛えるときの音が好きだった。鋼を鍛えるとき、鋼を職人たちが三人一組になって、トンチンカンと、鍛えていく。せんろはおお。っと、声を漏らした。せんろは童心に帰っていた。せんろが見ていると、テツノスケさんが、テツロウも手伝えよ。という。せんろは私もやろうかな。という。リノは奥からせんろ楽しそう。良かったね。という。せんろはカッコいいと言えるものではなかった。

腰もプロとは違って入っておらず、当代さんに「向いてねえな。お前さん。」と言われる。せんろはいつも彼女達の技術班で体力には自信があるはずなんですが。」と、苦笑いする。当代さんはせんろの事情を知っているので、驚かない。しかし、こういった。「熱を感じて生きる。汗かくってことは頭の中でできると思ってても、違うもんさ。リノは子供だ。ソファだって。おもちゃだろ。けど、俺は、俺たちが相手にしてるのは火。炎様よ。」と笑う。せんろのとはまた違った笑いだった。せんろはそういうと、「お互い骨が折れますね。彼女たちも、手のかかる子なんだけどな。」と笑った。

 

テツノスケさんは「親心だね。テツロウよ。結婚もしてねえのにな。でも、分かるよ。俺も刀やってるから、俺も親だ。」と笑った。

 

せんろは、そうですね。と笑った。リノやソファの事を思った。けれども、彼女たちには彼女たちの道があるから、あくまで私はサポート役だ。と思った。

そう思うと、なぜだか、十二単を着ているリノとピアノコンクールに出ているソファが思い浮かんだ。せんろはふふっと笑った。その頃の自分はどこで何をしているのだろう。所帯をもって身を固めているのだろうか。そうなったら、当然、彼女らとも別れなければならない。その頃の自分はどうしている。のぞみさんと結婚しているのかな。そう思った。

ソファがピアノ。いくらなんでも夢が過ぎるよな。とか、リノが着物だと、着物でアフレコをするのか。と思った。きっと、鍛冶場の熱で頭が変になったのかな。と思った。着物でアフレコ。人形がピアノを弾く。おもしろいけど、ぶっ飛んでいた。けれど、私の夢だからいいか。と思った。

 

夕方、大広間、お座敷からいい匂いがする。せんろ家のお手伝いさんがごちそうを作っているのだ。リノは、お手伝いダヨ。リノもするヨね。と言って喜んだ。リノはどんどんと煮物やお刺身、鯛の釜飯を運んでいく。テツノスケさんの奥さんがお姉さん。よろしく。といって料理を運ぶように頼んでいた。お手伝いさんたちは目を丸くしてどこの子かねえ。という、リノにどこの子。と聞くと、秘密。という。お手伝いさんははてな。と首をかしげる。テツノスケさんの奥さんがふふっと笑う。そして、お手伝い、ありがとう。といった。

 

夜、皆、お料理を楽しんでぐっすりだ。そふぁは、リノの寝顔を見た。リノは可愛い赤いリボンのついたパジャマを着ていた。そふぁは、今日は疲れましたね。リノ。といった。

せんろも疲れて寝ていた。そふぁは、暗い闇の中で月明かりを見た。

もう、秋である。秋は月が美しい。寒くなり、気温もさがり冬が近くなる。

そふぁは思った。なんて美しい月なの。と思った。そして、この夜がいとおしくなった。

今日、この日の音楽は乃木 アスミさんの「月の光ね。」と、そふぁは冷たい声で言った。

涙のガラスは月の光に輝き、ソファの目の中に光のたまを作っていた。ソファの目のラメが虹色に輝いていた。

 

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