永遠にひとつ。政治家稼業 パラレルファクター。
私は、今でも、覚えている。あのおもちゃの事を。
先生に、出会う前、リノに会う前、私は、どこぞの国のおもちゃ工場で、作られた。だから、この紫色の髪も、この可愛い目も、すましたお姉さん風の口元も、すべて、作られたもの。私のであって、私のものじゃないもの。私は、船に乗って、このワコクに来た。他県、小野道もそうだし、あと、どこか。トラックに乗って、こっちへ来たわ。
私は、女の子向けのおもちゃだったけど、同じトラックで、フォゼくんという特撮ヒーローのおもちゃと会ったわ。とても、カッコいい人で、「俺は、ガクエン・ソルジャー・フォゼ。ヨロシク。と、朝の番組、そのまんまで、答えた。彼は、おれは、この世界のヒト、全員と、友達になる。と言っていた。
俺は、うそは、つかねえ。と、笑った。仮面だか、ヘルメットなのか知らないけど、その目は、キラキラした緑色のいい目だった。
お前の夢は。と、聞かれて、私は、戸惑った。私は、おもちゃよ。そう思っていた。私たちが目標をもってどうするの。?と思ったが、フォゼくんは、「ん。ねえのかよ。なんかあんだろ。?お高く止まってんな。」って、と、笑った。
まだ、高校1年生くらいで、声変わりも、したばかり、だから、少し、声がかすれていた。そんなフォゼ君を見て、私は、高校生ね。と思った。高校なんて、おもちゃだから、行ったことないけど、高校って、なんだか、懐かしい響きね。そう思った。
そう思った私は、「夢や、目標があるって、素敵ですね。」と、フォゼ君にいった。そういうと、フォゼ君は「夢や、目標がねーやつなんて。いねーよ。皆、何かしら、あるもんだ。夢やキボーな。」と、笑った。フォゼ君は、そういって、私の紫色の髪をなでた。ような気がした。フォゼ君の手は、ごつごつしていて、プラっぽくて、安っぽい手だったけど、とっても、温かい手だった。私は、フォゼ君の手に妙な温かさを感じた。
私は、気持ちがいいなあと思って、そうね。と、お姉さん風の冷たい口調でいった。
そういうと、私は、私の夢は、「今のフォゼ君みたいに温かい言葉を掛けられるいいおもちゃになること。それじゃ、だめかしら。」と、言った。
すると、フォゼ君は、「夢、あったじゃねえか。?お前。名前は。」と、言った。
私は、反応に困った。だから、「パープル。」とだけ言った。
すると、フォゼ君は、またな。パー子。いいお客さんにかってもらえよ。俺も、絶対、テレビの俺より、売れてやるよ。だって、おれは、このガクエンの生徒、みんなと、友達になる男だ。そんで、そんで、姉ちゃんも、越えて。俺は、サイキョー。サイツヨの戦士になって、やるんだ。と、テレビの決め台詞も含めていった。
フォゼ君には、ドラゴン・リューコという、お姉さんヒーローがいるらしかった。
それは、前番組のヒロインで、前番組は、お姉さんが、卒業したところで、終わったようだった。
私には、関係ない事だったけど、フォゼ君は、お姉さんの事を、自慢げに話した。
そして、パー子もよう。女なら、姉ちゃんみたいになれよな。俺、思うんだ。女は、可愛く厳しくって、よくわかんねえけどな。と笑った。
フォゼ君とは、それっきり、同じお店にいることは、分ってるけど、私は、女の子向けコーナーで、フォゼ君は、男の子向けコーナー。おねえさんのおもちゃも、たぶんそっち。彼が売れたのか。または、うれのこったかは、分らない。けれど、私には、関係ない。
だって、私は、おもちゃだから。
今日は、フォゼ君役の、俳優の福田リュウセイさんが、選挙のキャンペーンで、先生の事務所にいらっしゃった。
私は、窓辺に、たって、福田さんの顔をみていた。
福田さんは、とっても、カッコよくて、スーツが良く似っていた。けれど、ガクエンソルジャーの頃より、おじさんになっているようだった。
フォゼ君のおもちゃの箱に書いてあったから、いまでも、覚えてる。
だけど、福田さんは、私の事なんて、知らないだろうな。だって、わたしは、おもちゃだもの。そう思った。
そうおもうと、あの時のフォゼ君を思い出した。楽しそうに、嬉しそうにしてたな。そう思っていると、せんろ議員と、福田さんがなにやら、ガクエンファイターシリーズの話しで、盛り上がっている。せんろ議員は、「ガクエンドラゴンは、スケバンで、ファイターは、番長よね。イメージだと。」と、勢い余って、おかまチャン風、リノ側へよっている。何とかよらないように、リノが「ダメダヨー。^^」と、心のスイッチのレバーをテツローさんの方へ、戻そうとしている。
そういうと、福田さんは「そうですね。姐さんは、凄かった。あの作品で、僕は、鍛えられました。」と、笑った。
その時、福田さんは、笑った。
その時の福田さんの笑顔は、あのときのフォゼ君に似ていた。
その時、私は、話したい。私よ。フォゼくんと、思った。
だけど、左手はない。私の体には、今日は、なんにも、入っていない。
フォゼ君は、その間も、ニコニコと笑っていた。
フォゼ君に会いたい。話したい。そう思った。
リノは、「ん。^^どした^^?」と、私の方を見ていた。
その笑顔が、誰にも見えない、笑顔が愛しかった。