清水のぞみさんは、朝からドキドキしていた。
せんろさんにチョコレートを渡したくて、ドキドキしていた。
せんろさんの事務所で、清水さんは、ドキドキしながら、書類を片付けていた。
せんろさんは、いや、清水さん。せいがでますね、今日は、きびきびと、あなたらしいと、笑った。すると、清水さんは「いつもは、きびきびしてないって意味ですか。」と怒った。
せんろは、「青い顔をして、いや、きびきしてるな。と思って、笑った。
そうですか。と、またきっと、睨んだ。
せんろさんは、「ごめんね。でもさ。アタシ。そう思うわ。清水さんはいい秘書よ。
勉強もできるし。いい秘書だわ。」と、言った。
清水さんは、また睨んだ。
今日は、一日。話さない方がいいわね。と、青い顔をした。
清水さんは、女性用のトイレで泣いた。なぜなら、心と違うからだ。
清水さんは、せんろは、優秀で素敵だということを知っている。
耳の感覚がいいことも、知っている。
だけど、女の子風の所があることも知っている。
本当をいえば、どこかへ行ってほしい。
でも、そんな部分も、彼の一部なのだ。
そう思っている自分も、最近、生まれた。
あの冬の日に見た彼の顔。
今より、若く、しわもなかった。
あの時の彼が一番好きだ。
あの時の彼は、かっこよかった。
今は、どうだろう。
変なときばっかり、女の子風に、なる気がしてならない、
だけど、今、彼の隣で、仕事をしていると、あの時の彼も、まだ、生きている。ということが分かった。
いつも、色んなところを回り、話を聞く彼。
そんな彼にあの日みた彼と変わらない彼を見る。
そうおもうと、なれないお料理をして、チョコレートを鍋で溶かして、チョコレートをあげたくなった。23歳と、31歳、年の差がある。だけど、年の差なんて関係がなかった。
そう思うと、渡したくて、感謝の気持ち。これからも、宜しくお願いします。これからも、応援しています。という気持ちでいっぱいになった。
そう思って、働いていると、夜になった。
夜。せんろに、清水は、チョコレートを渡した。
ハートのチョコレートを心の中では、好きです。といったが。
声では、こちら。チョコレートです。今日は。バレンタインデーですから。
と、言った。
せんろはその時、「バレンタインデー。そうか。と、いって、カレンダーを見た。
カレンダーには、2月14日、バレンタインデー。と書いてあった。
その時、清水さんはがっかりした。
忙しさに負けて、忘れていたなんて。と思った。
けれど、仕方がないわよね。と思った。
そう思うと、もういい。返して。と思った。
清水さんは、がっかりした。
けれど、そう思ったとき、せんろさんは、可愛い声で。「ありがとう。アタシ。チョコレート、もらったわ。」と、いつも、清水さんが、きっと、睨んでいる声で言った。
だけど、このせんろさんも、せんろさんなのよね。と思っていた。