冬の朝。
小寺のお家の冬は忙しい。家の男衆は、皆、家の者から工場のものまで総出で、雪かきをするのだ
石材店の職人たち、トンさんは、もちろんの事。事務方の小寺石材店パソコン部の山下さんまで、雪かきに駆り出されていた。山下さんは「僕は、事務方ですよ。まったく。」と、言った。
父さん。勘十郎も、雪かきを朝から、石屋の男衆に交じって、雪かきをした。
雪は、重かった。こんなに重いのかと思った。しかし、俺は、男である。
男は、家族を、守らねば、ならない。
そう思って、勘十郎父さんは、雪かきをした。
そんな中に、アラタもいた。アラタは、眠そうにあくびをしている。
そして、「俺、寝るよ。父さん。俺、雪かきなんか。嫌だ。と、言っていた。
アラタが、そういうと、勘十郎父さんにぶっ飛ばされた。
アラタは、あっという間に、雪まみれになった。
アラタは、「何すんだよ。父さん。風邪ひいちゃうだろう。」と、言って、怒った。
おやおや、朝から、大戦争である。
勘十郎が、なんだあ。アラタ。と、きっと睨んで、張り手をしようとすると。
トン吉さんが「親方。朝から、喧嘩するのは、よくありませんで。それに、こづえさんも、お美夜さんも、奥様も、大奥様だって、おきちまいます。ここは、静かにしましょう。エドの小粋な豚に免じて。」と、鼻を鳴らして、言った。
はて、エドの小粋な豚といったが、江戸時代に豚はいたのだろうか。・・・。
トンさんがそういうと、勘十郎父さんは「トン吉。偉くなったな。」と、思ったが、
こづえや、お美夜、里子さん。おりんが起きてしまうといったので、鉾、いや、拳を収めた。
アラタは、助かったと、肝を冷やした。だが、勘十郎父さんに、簡単にぶっ飛ばされた自分が悔しかった。
そう思って、アラタは、その怒りを雪にぶつけた。
父さんに負けるものは、姉ちゃんも、母さんも、おばあちゃんも、回りまわって、未来のお嫁さんも、守れない。
お嫁さんと、言えば、アラタはいつも思っていた。もらうなら、うんうーんと外国の人がいい。カメリア人でも、良い。砂漠や、外国の摩天楼に住んで、それを見て、ワカメの味噌汁を飲むと決めている。髪の毛は、水色でも、黄色でも、ブロンドでも、ドレッドでも、とにかく外人だ。ワコクの女は、姉ちゃんで、懲りている。ばあちゃんですんでいる。
女性、未来のお嫁さんの話をしているのに、ワコクの女性の例が、姉ちゃんと、おばあちゃんとは、何という人だろう。おや、お母さんの話をしていなかったような。
アラタは言う、俺、秘密だけど、母さんみたいなヒトがいいと思う。朝も夜も、優しく、おはよう。アラタ。とか、お休みアラタって、言ってくれるようなヒト。
そんな外国人がいいなあ。はて、そうねえこんなヒトが、いいねえだの、なんだの言って、
結局、お母さんみたいなヒトとは、何事か。
そんな人は、ワコクにしかいない。そんな人は、里子母さんしかいないのだ。
まあ、世界は広いので、瓜二つのヒトは、いるとしよう、
けれども、それは、似た人であって、その人ではないのだから、結局、それは、お母さんでは、ないのだ。それに、ワコクの女性も、いいはずだ。
そんな了見だから、アラタは、姉ちゃん。こづえに、からかわれて、
「ネェ、あーちゃん。誰も、貰い手ガ、いなカッタら、お姉サンが、もらったげるわネ。」と、言われるのだ。とっても、可愛いコエで、そういわれたが、
うるせー。と、怒った。
しかし、難しいものだ。本当の幸せは、海の向こうを見ずとも、案外近くにあるものなのに。素朴なものより、刺激のあるものを求めてしまう年頃なのだろうか。
演歌より、ロック、邦画より、洋画である。そんな人である。
まあ、若者にそんな事を言うのも、ナンセンスであるが。
難しいものである。このナンセンスを解決するには、舶来ものより和のものかもしれない。
君の母は、君の近くにしか、いない。君の母は、君の家にしかいないのだ。
それを海外で見つける。難しいものである。
そんなアラタの母、里子、どんな気持ちで、アラタを見守っているのか。
こづえは、女の子である。お母さんの夢としては、誰か良い人のお嫁に行って家庭に入ってほしいと思っているのだろうか。
しかし、アラタは、男の子である、男の子は鉄砲玉である。
どこへでも、飛んで行ってしまうのだ。
お母さんもさぞ、気が気ではなかろう。
母は来ました。岸壁の母である。
ここまで、つらつらと、書いている間にも、アラタは、せっせ。せっせと、雪を書いていった。
寒さの中の妙な温かさの中で、まだ夜のような朝のような朝もやのなかで、アラタは男になっていった、このように書くと、何やら、別の方向の成長のような気がするが。
まずは、第一段階。今日は、ここまで。それは、心に留めておくとして。
芝浜だ。ゆめになるといけねえ。である。
そうこうしているうちに雪かきは終わった。
トンさんも、山下さんも、勘十郎父さんも、フーフーいっている。
アラタも、ああ、もう。疲れた。と、言ってフーハー。言っていた。
けれど、アラタの心には、充実感が広がっていた。
なんだか、よくやったと自分でも、思った。
アラタ、頑張れ。その心が未来のお嫁さんを連れてくるのだ。
ここは、小寺家の台所である。そこでは、里子母さんと、お美夜ちゃんが、朝ご飯を作っていた。今日の小寺家の朝食は、アジの開き。
台所の窓から、美味しそうな焼き魚の匂いがぽわんと、匂っていた。
今日は、お美夜ちゃんが、味噌汁を作っていた。
アラタは、台所の窓から、漂ってきた幸せのにおいに、、いい匂いだな。と思った。
お母さんの味噌汁の匂いだ。そう思った。
空のは、朝方だが、星が見えた。
その星は、アラタをぴかっと照らしていた。
ここにも、一人、一日が始まる人がいた。
こづえである。こづえは、眠気眼で、あくびを「フワぁー^^」と、可愛いコエで、言って、杖をついて、ゆっくりと、一階へ降りて行っタ。^^
一歩一歩下へ降りていくごとに一階の明かりが銀色の杖を照らした。
一階まで降りると、こづえは、台所のお母さんと、お美夜ちゃんに、ごあいさつをした。
そして、こういった、「ネェ、ママ、あーちゃんは。」と、言った。
すると、里子母さんは、「アラタは、お父さんと、外よ。雪かきだって。」
と、優しい声で言った。すると、こづえは、「フーン。雪かキ。あーちゃんが。」と、言って、窓の外を見た。外は雪で白くなっていた。
ありゃりゃ、アラタ、フーン。^^で終わってしまったぞ。
雪の朝には、男の戦いが。寒い朝には、母の愛が、いつもあるのだ。
外を見るこづえに、里子は、こういった。「こづえ。おばあちゃん、起こしてきてくれない」と、言った。
こづえは、里子母さんがそういうと、「ハーイ。ママ。おバアちゃんネ。」と、言ったそれは、とてもカワイイコエだった。