ござい東西。こちらは。
コーヒーは、私にとって、執筆の友だ。
なぜなら、コーヒーは、私を眠りから、冷まし、新たなインスピレーションを与えてくれる。
あの、一家を書くとき、勘十郎が、作業場で、石を削っている時、里子母さんが、家で、お洗濯ものを取り込んでいる時、夕方、西日が差す部屋で、舶来の音楽を聴きながら、自分は、ワコク人であるのに、さも、自分も、その一員になったかのように、ワコク訛りやら、カタカナやら、それらしく発音しようとして、宇宙語やら、なんやらわからない奇異な言葉で、歌おう立っている時。こずえが、朝、銀色の杖を眠気眼で、今の電気に照らして、こっちへ向かってきている時。私は、コーヒーを飲む。
コーヒーは、頭を冴えさせてくれる。私は、コーヒーを飲むと、やる気が出るのだ。
おりんばあちゃんは、コーヒーなどは飲まないだろう。彼女、いや、ばあちゃんは、もっぱら、ワコクの渋い緑茶であろう。そして、テレビを見ながら、ボリボリと、お煎餅を食べるのだ。
そして、気が済むと、縁側で、西日を受けながら、眠るのだ。
お美夜ちゃんは、コーヒーの事は、本や、町の喫茶店などで知っていた。
お美夜ちゃんは、喫茶店など、いった事がなかった。
一度は、行ってみたいと思うのだが、親分さんが、ダメだと言いそうで、怖いのだ。
何、パソコン教室にこずえが通うことを許した親分さんである。行った時は、行った時で、
許してくれそうだ。だが、お美夜ちゃんは、そこが、気のゆるみになるわ。と、甘えないと、思っていた。
コーヒーに、砂糖を入れないと甘くはない。ブラックは、苦いだけだ。
だが、その中に、香り高い香りや、趣などが、隠れている何やらどこぞの親分さん、そっくりである。
勘十郎父さんは、コーヒーを飲むのだろうか。?飲んでも、缶コーヒーぐらいだろう。
こずえあたりが、仕事の休み時間を見計らって、土日などは事務所にやってきて、
コーヒーを入れて持ってくるかもしれない。杖を突いていて危ないので、お美夜ちゃんも、一緒に。そして、父さんはその二人の顔を見るともなく、見て、「おう。こずえ。美夜ちゃん。」と、蚊の鳴くような声で言って、怒ったときばかりではなく、こういう時も、銅鑼のような声で、はなせばいいのに。小さい声で話して、「そこに、置いといてくれ。ありがとう。」と、言って、それとなく、嬉しそうにしているのだ。
まったく、勘十郎父さんは、たいそうな、父親である。
父親というのは、お父さん。と、いうのは、そんなものなのだろうか。
昨今、コミュニケーションという、言葉を聞くようになって、久しい。
企業などでは、コミュニケーションを重要視しているそうだ。
そんな中に、あって、父親、とくに、勘十郎父さんの役割も、また、変わっていくのだろうか。?おりんばあちゃんは、いう。立て板に、水みたいに、はなされてもね。という、
アラタは、「そういうやつ。って、良いよな。海の向こうだと。もっと、居るんだって。
コミュニケーション。大事だよな。という、こずえは、「私の家の、コミュニケーションは、このお夕飯の時ね。パパは、話さないけど。よく食べるわ。ああ、それから、お美夜ちゃんも。いるわね。それから、ママも。」と、笑う。ね。パパ。と、勘十郎父さんに向かって可愛くウインクをする。
しかし、勘十郎は、意に介さなかった。ただ、黙々と、夕飯の鮭の塩焼きをおかずにして、ご飯を食べていた。こずえのウインクを見て、おりんばあちゃんは、「なんだい。そりゃあ。」と、言って、まねしている。しかし、両目をつぶってしまって、ただ、目をシパシパさせるだけに、なってしまう。
アラタは、それを見て、笑った。「ばあちゃん。何、やってんの。?」と、いって、笑った。
そして、カメリア人っぽく、「ナンセーンス。」と、言って笑っていた。
カメリアと言えば、カメリア人は、この家族の団欒を見て、何を思うだろうか。?
私は、コーヒーを飲むとき、いつも、思う、人が和んでいる時。洋の東西をとわず。
お茶やコーヒーがある。そして、そこには、必ず、なごみがあると。
友人から聞いた事がある。ワコクの茶と、英語のティーの、語源は、同じだと。
辛国などにも、茶は、あるから、洋の東西と、書いたが、世界中なにかしらのお茶は、あるかもしれない。
世界中といったが、世界と言っても、いろんな世界が世の中にはある。
だから、お茶をしらない。国の人たちにも、ござい東西、こちらが、お茶で、ござります。
と、いって、教えてあげたいものだ。
長々と、書いているうちに、小寺のお家のお夕飯がおわったようだ。
皆、お茶を飲んでいる、里子母さんの入れた、緑の温かいお茶だ。
少し、渋いが、温かい。お茶をのむと、体が温かくなる。体の芯が温まる。
ああ、良い気持ち。ほわっと、ほろりと、良い気持ち。
皆、そう思っていた。勘十郎父さんも、アラタも、おりんばあちゃんも、こずえも。
ああ、ここまで、書いて、コーヒーがほしくなった。
ここで、私も、ひとつ。
コーヒーは苦い。だが、砂糖を入れると、甘くなる。ブラックだと、かおりが、たって、美味しい。
いいものだ。
彼らにも、一つ、いかがかな。
ござい東西。こちらは、コーヒーで、ござります。と、一つご挨拶して。
コーヒーの話としたい。