新年も、開けて、今日を入れて、7日でございます。
七草がゆ、召し上がりましか?アタシは、それは、もう。七草がゆと、いうのは、きいた話によりますと、年末年始、正月の祝いで美味しいものばかり食べて、胃が弱ってしまうんでございますよ。そいつを七草がゆは、防ぐというので、倭国の寺なんかでは、食べられていますね。
正月なので、おめでたいお話を一つ。
雪降る中を坊主頭の青年が、これは、これは、早足。早い足で、走っています。
これは、お坊さん。?いや、師走だからさ。場所は、ワコク。いや、違う。でも、これ、正月の話でしょ。?坊さんでしょ。えらいお坊さまだ。そうにちげえねえやい。いや、違うんだって。どこが?ここが。靴を見て見なよ。倭国の旗だ。本当だ。こりゃ、昔のだ。ワコク大殿国と、書いてある。でも、コイツァ、もうなくなった国なんじゃ、なかったか?いや、黙って聞きなさいよ。これは、どぅやら、むかしのはなしのようでございます。
時は、?えっ?時は、幾つ。えっ?時は、幾つって、聞いてんの。そんなね。女の子の年みたいに聞かないでくださいな。それにしたって、イロハってのが、あるんですよ。
時は、タイテンの二十五年ですね。
えっ?そう。何が。?俺、生きてたよ。
本当で。?そうだよ。俺は、長生きなんだよ。
結構、年。いってるんですね。
うるさいな。俺は、お前より、年上、兄さんなの。兄さん。わかった。?
はい。と、まあ、長話をこう、してると、時間ばっかり食っちまって、いけねえ。
食うというと、餅、寿司、酒。
そんなもんは、この時代にまだ、効果でございまして、この青年、甘栗キンシロウの家は、貧しく。食うにも、やっと。
そんな彼。しかし、足だけは早かった。
男たるもの。早いのは、手がいいなあ。
いや、手が早いと、パワハラだ。セクハラだ。と、訴えられます。能ある鷹は爪を隠して。
いや、違うか?でも、この青年の場合は、違ったのです。能を隠さなかった。
この青年。村一番の健脚。剣客じゃ、ごさんせんで。でも、似たようなもんか?それは、ワコク中に広まり、ついには、ワコク大殿国体育協会の内灘ジゴロウ。の目に留まり、ワコク初のオリンピック選手になったそうでございます。
オリンピック。愛と、夢と、自由と、平等の祭典。いや、噺家も、みならいたいものでございますな。アタシは、何分喋っても、まだ、まだ、安いのです。姉さんや師匠の方が、まだ、高いので、ございますよ。
ええ師匠。あ。あ、いいか。いいか?甘栗、あれが、いちばん星だ。お前は、このワコクで、一番となるのだ。この星一番の。健脚。走り手。ランナーと、なるのだ。おや、走るのは、手ではなく、足では?それじゃ走り足か?忍び足、見たいですなあ。ふふ、とまあ、こんなことを言ったとか?言わなかったとか?
時は、タイテンの二十五年の冬、甘栗二十一の冬でした。その日は、星が、よく見え、寒空に、それが、輝いて言いたそうで、ございます。
おお。そこのもの。何者じゃ?余は、大殿である。そなたは、
わたしは、甘栗キンシロウ。ワコク一の健脚で、ございます。剣客?刀を差しておらぬでは、ないか?いえ、おそれながら。
刀など、わたしには、いらぬので、ございます。
ほお。
私は、この足で、相手と、わざをきそいまする。この、健脚で。私は、走り手、ランナーですので。
ランナー?走り手。?面白いものじゃ。
ありがたき幸せ。
キンシロウと、やら、大義である。
そなたをオリンピック選手とやらにしてやるぞ。
はあ。大殿様。
こうして、かれは、ワコクで最初のマラソン選手であり、オリンピック選手と、なったのです。
お正月にありがたい。大殿様の。いや、いだてん様のお話でした。
まだ、まだ、寒さも、増してまいります。
お風邪など、召されぬように。
冬来たりなば春とおからじ。
いだてん様のように汗を流し、走りながら、
師にならい、体を温め、春を待ちたいものです。