冬の日の幻の法則。アルティメットセオリー。パラレルファクター。
アミルン博士は、ビックバン大学の食堂で、コーヒー。カメリアンコーヒーを飲んでいた。
異邦人である彼には、苦いので、少々、口に合わないが、カメリア人の男。
カメリアン ガイを気取るため、ブラックで飲んでいた。
カメリア人の男は、コーヒーに、砂糖を入れないという。
シェルダンは、たっぷり入れて飲むが。彼は違っていた。
彼が、インディラから、カメリアに来て、はや、8年がたつ。
月日のたつのは、早いもので。カメリアに来たばかりのころは、英語も、ろくにはなせずに、苦戦していた。インディラでは、高等教育は、英語で行われ、アミルンは、英語に自信があった。だから、ネイティブであるカメリア人たちとも、ペラペラと、難なく話せると思っていた。しかし、これが、上手くいかず、インディラ人もびっくりである。
インディラで話されている英語には、なまりがあるのだ。
だから、食べ物屋さんにいっても、お客さん。何言ってんだ。と、ろくに聞いても、もらえなかった。
大学でも、カメリア人のある研究者から、君の英語は聞き取れんよ。と言われた。
アミルンは、この時、この世で一番残酷なことは、刀で、体を切られることでも、銃で、撃たれることでもなく。言葉が通じないことだ。と思った。
そう思うと、アミルンは、インディラに帰りたい。船に乗って、帰りたい。と思った。
食事も、ファーストフード。ばかりが続いた。
そんなある日、アミルンの所へ、ブルース・チャンがやってきた。
チャンは、小さいころ、リーフリィから、こちらへやってきた移民である。
リーフリィにいたころは、あるお寺で、ブドーを習っていたらしい。
であるものだから、もし、リーフリィから、このブルースがママの都合で、引っ越さなかったら、今頃僕は、ブドーのチャンピオンになっていたかもね。」と、笑っている。
ブドーのチャンピオン。アミルンは、英語に疎いが、何だか、それって、へんなんじゃないの。と思っていた。
しかし、この男、いい男で、そんなアミルンにカメリア英語のレクチャーをしてくれた。
なんでも、僕こう見えて、クンフーを積んでいるらしい。
クンフーを積む。アミルンには、難しくてわからなかったが。そうなのかと思った。
それからというもの二人は、チャンの家に兄弟のようにあがり、ママの手料理を食べ、時には、一緒に、ハイパーボウルというアメフト中継も。秋には、サンクスギブイング、感謝祭のお祝いもした。チャンに英語を習ってから、なまりも消え、すっかりきれいな英語になった。すると、周りの目の色が変わった。言葉で、こんなに違うのかと思った。
けれど、どこかで、故郷を、インディラ国を、否定されたような気がした。
その話を、チャンにすると、こう答えた。ポジティブにいけよ。アミルン。英語が分かるようになったら、俺とママと、仲よくなれただろ。いいか、よくきけ。俺は、あんまり偉そうなこと言えないけど、なんでも、気の持ちようだと思うぞ。」と笑った。
その時彼は、AIというのの研究をしていた。なんでも、彼女ロボをつくるらしい。
名前は、エミリー。アミルンは、ちょっと、変なんじゃないのと思ったが、
チャンが、そのたびに、「変なもんか。俺にはブドーの神様がついている。」と笑った。
AIなのに、ブドーと思ったが、チャンがそういうので、そうなんだとアミルンは納得した。
そんなAI彼女を作ろうとしていた彼が、いまや、薬の研究をしている。バーニーちゃんと、結婚したんだから。不思議である。バーニーちゃんは可愛い。髪の色は、カメリア人らしい金髪で、紫色のフレームのメガネをかけている。
頭もよくて、可愛い。けれど、怒ると、チャンのママ。そっくりの声で、怒る。
最近、顔も少し、似てきたらしい。他人の空似かなと思う。
けれど、アミルンにとって、そんなチャンとバーニーは、カメリアの大事な家族なのである。それから、チャンのママも。
そんなかれには、忘れられない思い出があった。
それは、ワコクで、とある女性ジャーナリストの取材を受けたことだ。
それは、去年の二月ごろの話で、その日は寒かった。
彼女は、冬の服装、コートを着ていた。
とても、可愛い女の子。夢もあって、希望もある。国は違えど、アミルンは、彼女に自分と似た何かを感じた。アミルンが、彼女に、自分の夢。自分の見つけた星に、自分の名前を付ける事。と、言う夢をいうと、彼女は、そうですかと。優しく言って、聞いていた。
幻のような女の子。喫茶店の明かりの中で、冬の日に輝いていたあの子。今。どうしてるかな、アミルンは、そう思った。そう思うと、ため息がでた。
コーヒーの湯気が、窓際のテーブルで、ひっそりと登っていた。
外は、もう夜遅いので、真っ暗だった。
星がキラキラと、あの日のあの子のように輝いていた。
アミルンは、それを見て、あいたいなあ。とつぶやいた。
後ろで、たまたま、夕ご飯を学食で食べている大学図書館司書のシュチューイが、心配そうにそれを見ていた。その時、のシュチューイの眉が、への字に曲がっていた。