懐かしい時間。この空の花。
今日は、ハロウィンだそうだ。
風が、冷たくなってきた。
もう、10月も、下旬だ。
今日、僕は、嬉しかった。
久しぶりに、あの子と、アスミちゃんと会うのだ。
最近、アスミちゃんも、僕も、お互いに忙しい。
以前と変わらず、手紙のやり取りはしているのだが。
会う事は、少なくなった。
僕は、外に出た。外には、仮装をした人たち。
子どもたちも、たくさんいた。
子どもたちは、皆、トリックアトリート、お菓子をくれないと、いたずらをするぞ、と言っていた。元気な子だな。僕は、その子供たちを見て、そう思った。
大人たちも、ドラキュラや、狼男、悪魔の仮装をしていた。
僕は、その人たちを見て、ああ、仮装していなかったと思った。
思えば、僕の子どものころは、ハロウィンなんてなかったなあ。
あっても、映画の中で、海外の子どもたちが、ハロウィンを祝っていたような気がする。
僕は、それを見て、海外には、こんなお祭りがあるのかと思っていた。
僕が、そんなことを思いながら、町を歩いていると、「トリックアトリート。」と、声をかけられた。そのトリックアトリートは、とても、可愛い声で、どこか、とっても、懐かしいような気がした。
その声は、アスミちゃんだった。
アスミちゃんは、僕が、今日は、いつもと、逆だね。というと、アスミちゃんは、
「うん。今日はね。ハロウィンだから。町田君をびっくりさせちゃえ。」って、思ったんだ。だから、今日は、私が町田君の所へ、来ました。」といって、笑った。
アスミちゃんは、寒いのか、マフラーをしていた。
毛糸のマフラーで、お母さんに作ってもらったのかな。と僕は、思った。
僕が見ていると、アスミちゃんは、僕に「ねえ。町田君。私ね。町田君の顔、久しぶりに見たよ。」と笑った。
その時、アスミちゃんの目は、キラキラとしていた。
目が、キラキラすることはないかもしれない。けれども、アスミちゃんの場合は、違うと思う。それに、今日は、ハロウィンの日、不思議なことが起きても、不思議ではない。
僕が、そう思っていると、アスミちゃんが僕の手を握ってきた。
僕は、ちょっとドキッとしたが、ああ。と思った。
そこは、僕の役目だったのに。そう思った。
僕が何か考えている間に、アスミちゃんは、行動に表す。
アスミちゃんの手は、柔らかくて、温かかった。
心臓が、ドキドキしている。
もう。いい加減なれろよ。と、自分でも、思うのだが、中々なれないものだ。
ここは、一つ、男らしく。そう思った僕は、これから行く所を、自分で決めようと思った。
そう思った僕は、いつもより、大きな声を出して、アスミちゃんに
「よし。古本屋さんに行こう。」と、アスミちゃんに言った。
アスミちゃんは、少し、びっくりして、「どうしたの。町田君。急に大きな声出して。町田君。リラックス。外で、大声は、出さないよ。」といって、笑った。
この時、僕は、そんなつもりじゃないのにな。と思って、少し、残念な気持ちになった。
残念。アスミちゃんと、手をつないでいるのに、残念。そんなわけ。あるか。と思って、
僕は、気を取り直して、「うん。わかった。アスミちゃん。気をつけるよ。」と、言って笑った。僕が笑うと、アスミちゃんは、「本当に。」と、言って笑った。
前から思っていたんだけれど、アスミちゃんは、僕といると、本当に楽しそうな顔をするな。と思った。アスミちゃんの笑顔を見ていると、本当にそんな気持ちになった。
僕は、幸せだった。幸せな気持ちになった僕は、アスミちゃんに「アスミちゃん。行こう。」といって、古本屋さんの方へ行った。
そこへ行く途中に、青や緑のキラキラとしたイルミネーションを見た。
アスミちゃんは「うわあ。町田君。見て、イルミネーションだよ。」綺麗だね。と、喜んだ。
その時、僕のアスミちゃんの手を握っている手も一緒になって、上下した。
アスミちゃんは、嬉しい気持ちになったので、自分の手を嬉しそうに動かしていた。
僕は、最初は、なんともなかったが、少し、痛かったので、「アスミちゃん。痛いよ。」といった。
僕が、そういうと、アスミちゃんは、「ああ。大変。町田君。ごめんね。」と僕に謝った。
僕は、「いいんだ。アスミちゃん。僕は、男だから。こんなの平気だよ。」と、言った。
僕は、この時、自分でも、なにいってるんだよ。と思ったが、悪い気はしなかった。
僕が、そういうと、アスミちゃんは、ふふっと、笑った。
僕は、古本屋さんに行った。
古本屋さんは、たくさんの本があった。
僕は、大げさかも、知れないが、ワコク中の本がここにあるような気がした。
ワコクだけじゃない。外国の本。海の向こうから、来た本もたくさんあった。
僕は、この時、本が、たくさんあるから、ここは、本の国だ。と思った。
そう思った時、ここが、本の国なら、僕は、王様。ということは、少し、申し訳ないけれど、アスミちゃんは、お姫様かなと思った。
という事は、他のお客さんは、本の国の民衆たちかな。とそう思った。
そう思うと、僕は、お姫様の手を握っているのか。と思った。そう思うと、
また、ドキドキしてきた、だんだんと、慣れてきてたのに。そう思った。
アスミちゃんは、僕がそう思っていると、「ねえ。町田君。これ。私の本だ。」と笑った。
アスミちゃんは、その本をとると、懐かしそうにしてその本を持って、僕に、
「これね。私の事。知りたいって。ジャーナリストの人が取材をしてくれたんだよ。
小さい頃のお話しとか、コンクールのお話。病院や支援学校にいって、皆の前で、ピアノを弾いたり、お話ししたりね。そんな活動をしているよ。っていう事を、教えてあげたんだ。」その時のだよ。これ。と、説明してくれた。
僕は、その時、アスミちゃんは、自分の本をもっているのか。凄いなと思った。
僕も、自分の本を作りたいと思った。
僕は、「ねえ、アスミちゃん。それ、僕にも、見せてくれない。?」といった。
僕は、その本に、少し、目を通した。
そこには、文章だけではなくて、ピアノを楽しそうに弾いているアスミちゃんや、アスミちゃんが、楽しそうに、ピアノのお部屋で、ピアノの椅子に座って、インタビューを、受けている写真も載っていた。
その写真の中のアスミちゃんも、可愛かった。
こうして見比べるとこの写真より、今の方が、また、一つ、大人っぽくなっているなと思った。
僕は、最後のページを見た。最後のページには〇〇〇〇年〇月〇日 発行と書いてあった。
今から、ちょうど二年くらい前だなと思った。僕は、そう思った時、キスビットで出会った皆さんの事を思い出した。
クォルさんやカウンチュドさんもどうしているのかなと思った。
ああ。あの子は、お母さんや、お父さんと、元気に暮らしているんだろうかと思った、
ルビネルさんもどうしているのかな。と思った。
海の向こうの仲間たちに思いをはせた。
そう思うと、僕も、アスミちゃんのように、懐かしい気持ちになった。
僕は、そんな気持ちで、アスミちゃんに、「アスミちゃん。この本。良かったよ。」といって、アスミちゃんにその本を返した。
僕が、その本を返すと、アスミちゃんは、「そう。よかった。?私。嬉しいな。町田君。ありがとう。これからも、皆に、そういって、貰えるように頑張るね。応援してね。」といって笑った。
本を返すとき、アスミちゃんの手に触れた。その手は、柔らかくて、とっても、温かかった。
とても、優しい時間が、そこに流れていた。