このお話しは、↑↑のお話の続きです。
この二つをお読みいただくと、よりたのしめます。
今、せんろ議員の後ろに、とてつもなか、恐ろしいものがあることを彼は、知らなかった。
彼の後ろにいるのは、秘書ののぞみさんである。
彼女は、以前、アメリカのニューヨークにある大学に通っていたから、英語も、堪能である。
背もさらっとしていて、とても、スレンダーである。髪は、ワコク人らしい、黒髪で、唇は、赤々としている。
目は、バッチリもしていて、大きな目をしている。
そんな彼女は、いつも、真剣な目で、仕事に取り組んでいる彼女の仕事は、ワコク清倭党の議員秘書である。
彼女が、秘書をしている議員、せんろ議員は、
とても、愉快な男だが、政治家としては、少し頼りな穴ではないかという声も、党内や、世の人の間で、言われているが、そんな彼は、そんなことなど、どこ吹く風という風だ。
そんな彼が、彼の言葉を借りるなら、のほほんと、していられるのも、のぞみさんのおかげである。
あ、そうそう、内田さんのおかげでも、ある。
内田さんは、ワコクのカンサイ地方のうまれで、いつも、のんびりとした、口調で話す。
あれ、こんなところにも、のんびりさんがいる。とまあ、そんなのんびりさんたちをまとめているのは、彼女である。
彼女は、頭も良く、英語も、堪能である。しかし、今日は、何やら、様子がおかしい。
先程から、アメリカの議員さんの秘書のジャックさんと、先程、書いたせんろ議員のもう一人の秘書の内田さんに、抑えられている。
「もう、落ち着いてください。いつものことやないですか。こだまさん。議員の軽口は、今に始まったことじゃありません。」
内田さんは、優しく、のぞみさんを落ち着かせようとしている。
しかし、内田さんが、どんなに、抑えても、効かないのだ。
内田さんは、思った。怖いわ。ほんまに、この力、女の人の力なんかいな。かなわんて。そうおもっていた。
黒人のジャックさんも、流暢なワコクの言葉で、「落ち着いてください。のぞみさん。なにが、あったか。わかりませんが、心を落ち着かせてください。お願いします。」と、のぞみさんに、言った。
ジャックさんは、たても、横も、大きい、昔、ワコクには、高見山という、お相撲さんが、いたそうだが、ジャックさんも、そんな感じである。
黒々と、大きく、最初は、すこし、怖いなあ。と思うけど、気は優しくて、力持ち、そんな彼が、女の人を抑えるのに、汗をかいている。頑張れ、高見山。いや、ジャックさん。
これは、大変だ。
ジャックさんが、一生懸命抑えても、内田さんが、抑えても、抑えられない。彼女の顔は、いつもより、なんだか、怖い。
しかし、せんろ議員は、どこ吹く風、という風に、そんなことになって、内田さん。と、高見山、いや、ジャックさんが、汗をかいているとは、知らずに、そんなことは、つゆとも知らず、登板焼きを食べている。登板焼きは、美味しそうに、ジュー。ジュー。と音を立てて、
さあ、せんろさん。あんな人、ほっといて、登板焼き、食べましょ。美味しいよ。と、言わんばかりに、焼けていた。
こりゃ、どうしたものか、それにしても、いい匂いがする。かの、小説家、芥川龍之介は、ハスの花のずいからは、この世のものとは、思えない、とても、良い匂いがしている。と、記していたが、今、まさに、そんな匂いが、登板焼きからしていた。
登板焼きには、肉だけではなく、かなでやま県産の、人参、ベビーコーンも、入っている。県産野菜も、PRしたいという、このホテルの料理人さんのアイデアであろう。お肉も、たいへんいいお肉である。
そんなものだから、せんろ議員は、なにが、起きても、登板焼きのことで、頭が、いっぱいであった。
この世のものとは、思えないいい匂い、そして、いい肉、良い野菜、ここは、まさに、天国であった。
しかし、鬼が一匹。高見山と、内田さんに抑えられていた。
内田さんも、ジャックさんも、へとへと
アイム、タイヤードであった。
アイム、タイヤードというのは、のぞみさんが疲れた時に、それとなく、いう、口癖である。
その口癖が、出ることを祈りたいものである。
高見山も、内田さんも、もう、へとへとだ。
ウィーアー タイアードである。
そんなかなあって、そんなことも、知らず、せんろ議員は、登板焼きを美味しそうに、パクリと、口に、ほうばって、食べていた。
「こりゃ、笑顔にナリマスですヨ。パトリックさん。」と、片言の英語で、言って、あははは。と、笑っている。
とても、幸せそうである。
そんな彼の顔を見ると、なんでも、許したくなってくる。
彼女も、また、そうであったのか、疲れたのか、なんなのかは、知らないが、彼女は、暴れるのをやめた。観念したのか?しないのか?
大人しくなった。
これには、高見山も、内田さんも、ホッと、している。
なんとか、終わったわ。よかったわ。よう、乗り越えました。内田さんは、そう思った。
ジャックさんは、「ワコクの女性は、ヤマトナデシコと、聞いていたのに。なんて、力なんだ。」と、思っていた。
二人が、ヘトヘトになりながら、そう思っている時、彼女は、早口で「アイム、サド。せんろ、スマイル、イズ、キュート。」と、言った。
この言葉は、誰も、聞いていない。
彼女の目には、涙が、すこし、浮かんでいた。
彼女が、そう言ったのを聞いたのか、せんろなんとか、と言われたのが、わかったのか、
せんろ議員は、後ろを振り返った。
そして、こう、言った。
「あれ、オニババ。それから、内田さん。あー、ジャックさんも、なにやってんのよ。お三方。この肉、うまいね。俺、これ、好きだな。また、食べたい、もんだね。」と、言って、笑った。
その顔を見て、内田さんは、ほんまに、人騒がせな人、やわ。議員、人が、悪いなあ。と、思っていた。