なべぞこだいこん。小寺勘十郎一家。
細田美夜は、機嫌が良かった。
今日は、美夜の休日の日なのだ。
休日、美夜は、自分の部屋で、自分の母親の、美月に、手紙を書きながら、物思いにふけっていた。
美夜は、小寺石材店と言う、石屋さんに、住み込みで、働いている。
年は、今年で、19歳である。美夜は、残念ながら、高校には、経済的な理由で通えなかった。父親の細田 正は、勘十郎が若いころからの知り合いで、病弱な正は、
「俺に何か、あったら、奏山の山奥村に住んでいる娘の事、よろしく頼みます。」と、山奥弁で、言われた。勘十郎は、それに、「おう。分った。正。任せてくれ。」と、粋に言った。
正が、美夜の事を心配したのには、理由があった。それは、正の妻で、美夜の母、美月も、体が丈夫だとは、言えず、いつも、せきをして、こんこんとしていたからだ。
美夜の生まれた村、山奥村は、奏山の中でも、貧しい村で、これといった産業もなく雪に閉ざされている。しかし、美夜は、夏の山奥村の夏祭りが好きだった。笛や、たいこのお囃子が聞こえ、その日は、貧しい山奥村も、開けた都会のように、思えた。
今、山奥村は、交通の便が悪く、村の人口も、減る一方である。
村の中に、小さな診療所と、ワコク警察の交番があるだけである。
そんな村で、美夜は育った。だから、山を都会に、くるまで、コーヒーやら、グループサウンズやら、アニメやらパソコンやらがあるとは知らなかった。ラジオは、村にあったが、ニュースばかりやっていて、ニュースでは聞いていたが、それが、本当にあるとは知らなかったのだ。それに、アニメとパソコンは、最近の流行である。
ひょっこりひょうたん島は、人形劇なので、アニメとは、違う。
だから、こずえさんをみていると、少し、自分が嫌になる。高校に行けず、お手伝いさんをしている自分が、足の障害があっても、頑張るこづえをみていると、自分は何をやっているのかと思う。足も、動くのに。私。と思う。
アラタくんは、「いつも、この家は、古いんだ。
俺、こんな家、いやだ。と思うね。姉ちゃんは、漫画みたいな声だしさ。
ばあちゃんは、いつも寝てるし、父さんは、いつも、怒ってるしさ。うちで、まともなのは、母さんだけだよ。」もう。と、言っている。
山奥村から、家族を捨てるも、同然で、来た。私からしたら、甘えるな。と思う。
だけど、アラタ君、いつも、家に帰って、一言目には、「姉ちゃん。ただいま。」というし、
おばあちゃんに、食べられたカステラを見て、「ばあちゃん。俺のカステラ。食べたな。」と、声を張り上げている。それに、どんなに、家族の事、お姉さんの事、おばあちゃんの事、親分さんの事をバカにしても、里子さん、お母さんの事は、バカにしない。
そんなアラタ君の事を私は、可愛いと思う。こずえさんだって、私の事、「カワイイネ^^」って、あのカワイイコエで、言ってくれるの。嬉しい。私。学校、行ってないから。お友だち、いないのよね。村の友達とは、最初はお手紙のやり取りを、村と町で、やってたんだけど。
皆。お嫁に行っちゃったわ。子供が、三人も、生まれたわ。って、菊子ちゃんのお手紙で、読んだの。三つ子ですって。写真も、見たわ。白黒写真だったけど。もう、しばらくしたら、村の方も、カラーになるのかな。?そう思うと、何だか、わらちゃうわ。
だって、私の山奥村の夢は、いつも、白黒なんですもの。
この間ね、こづえさんと、「夢って白黒の物ですよ。」って、言ったら、
こづえさんびっくりして、「エッー。ミヨちゃんノ夢ッテ、白黒なノ。^^。」って、カワイイコエで、言ってたわ。私、その時、「えー。カラーなんですか。?」って、言ったら、
「そぅだヨ。み~んな、カラーだヨ。夢は。」って、また、びっくりされたわ。
そうなんですか。?って、こっちも、びっくりして。町の人は、違うのね。と、思ったわ。
小寺家の人たちを見ていると、皆不器用ね。皆、一言、多いのよね。って、思うわ。
だけど、ここが、今の私の家なの。そう思うと、皆、愛おしいわ。
母ちゃんの入院代も、きちんと、払わないといけないし、頑張らなきゃ。
そこまで、美夜が、手紙を書いていると、
こづえが、「ミヨちゃん。ハイルよ~。」と、言って銀色の杖をついて、ゆっくりと、入ってキタ。^^
そして、コウいっタ。
「ミヨチャン。今日ネェ、バレンタインデーダッタのネ。女のコ、達。み~んナ、わたしてたよぅ。^^」と、笑った。
美夜は、びっくりした。そして、休日くらい、一人で、静かに過ごしたいと思っていたが、
こづえのカワイイコエを聞いていると、楽しいので、許した。
美夜が、許している間にも、こづえは、「でさー。^^」と、話していた。
学校の女子と、男子の恋のハナシの事を。美夜に、話シタ。^^
美夜にとって、行きたくても、いけない場所。美夜にとって、行きたくても、いけない場所。
ちょっと、自慢してるの。と思ってしまう話を楽しそうにシタ。^^
こづえには、そんな気持ち、一つもない。
美夜も、それは、分っている。
けれど、美夜は、そう思ってしまう。
けれど、美夜は、そんな気持ちを隠して、聞いていた。
けれど、そのハナシは、聞いている美夜の心を楽しい気持ちにさせた。
だが、どうして、あの時、学校へいかないという選択をしてしまったんだろう。とも、思う。
美夜は、この楽しくて、悲しい時間に、大人になる。という事の悲しさ。嬉しさを見たのだった。
美夜が、そう思っている間、だんだんと、楽しくなってきて、こづえの声が、だんだんと、アニメっぽくなってゆく。美夜は、こづえの声は、気持ちによって、変わることを知っていた。
そして、一番、楽しい時、小さい女の子風の声に、なって、「コイバナッテ、いいーナーーー。^^」と、笑った。
その時、美夜の部屋のふすまをドンドンドン。と、叩く音がした。
そして、こういった。「姉ちゃん。ニャンニャンミャンミャンうるさいんだよ。外まで、まる聞こえだぜ。」と、怒って、どこかへ、行ってしまった。これから、どこか行くのだろうか。
こづえが、怒ろうと、戸を開けたころには、どこかへ行ってしまった。
今日は、バレンタインデー。思いを込めた贈り物をする日。
この日。女の子は、好きな男の子にチョコレートや贈り物をする。アラタは、今からチョコレートを貰いに行くのだろうか。
アラタが行くと、こづえは、だれも、いなくなった廊下に向かって、「ソンナンジャ、もてないんだからナー。^^」と、いった。
そして、美夜に怒った低い声で、「もう。なにあれ。あーちゃん。やってらんない。(鬼)」と、怒っていた。
美夜は、こづえさんは、カワイイコエや、素敵な声、小さい女の子風のコエなど、たくさんのコエを出せるのね。と思っていた。
そう思うと美夜は、本当のこづえの事を知りたくなった。
そう思うと、あることに気が付いた。
こづえさんは、人のコイバナはしても、自分のはしていない。
そう思って、聞いてみた。「こづえさんは、チョコレート、男の子に渡したんですか。?」と、聞いてみた。
すると、こづえは、「ジブンのかぁ、あのネ。^^」と、元気に言った。
だけど、どこかいやそうな顔だった。
そして、カバンの中から、そうッと、取り出した。
それは、チョコレートだった。
美夜は、「ごめんなさい。」と謝った。
こづえは。「ウウン。いいノ。私、勇気がなくって。ドキドキしちゃって。
あーちゃんの事、子供ネ。ッテ、言ってるのにネ。^^」と、いった。
目には、ナミダが浮かんでいた。
そして、固くなった自分の足を少し、さすった。
そして、こういっタ。^^
美夜ちゃん。「一緒に食べヨ^^。」と、言った。
美夜は、「はい。私でよければ食べますよ」と、言った。
私で、良ければ、食べますよ。って、なんだかぶっきらぼうだなと美夜は思ったが
美夜が、そういうと、こづえは、また泣いた。
そして、「アリガト。ミヨちゃん。^^」と、カワイイコエで、言っタ。^^
それは、とても、のびやかで、とても、カワイイコエだった。
こづえの銀の杖が、美夜の部屋の窓からの光を受けて、キラキラと光っていた。